鞆の浦,埋め立て架橋工事の許可差し止め

2009年10月2日

鞆の浦には何度か行ったことがある。確かにあの景観は心和む歴史的な雰囲気を感じることができる。しかし,そこに住む人々にとっては,現状では狭い道を多くの車がすれ違って町を通り抜けていくという不便さがある。そのこともそこにいけばすぐに体験することができる。住む人にとっては不自由であることには違いない。今回の判断は極めて画期的である。このような判断がでるとは正直いって予想していなかった。

まずは,歴史的景観というものに保護されるべき法的価値を認めたことだ。そのことの重要性は,地元の意思に反することがあったとしても歴史的景観の保護の方に重い判断を下した。通常は許可がなされた後に建設差し止め訴訟の形で争われるが,許可そのものの手続きを差し止めるという例のないものとなっていた。こうした,画期的な判決をだすことのできた裁判体に興味がわいた。

岩波新書の「司法官僚」がなかなかおもしろい。司法改革でも手をつけられなかった司法官僚システムである。その体制のなかで今回の判決が生まれた。司法官僚の一組織として,中枢自体にチェンジの空気があったのか。それともたまたま生まれた異端だったのか。「司法官僚」のなかでどう位置付けられる判決なのだろうか。そのことは,今回の裁判体を構成した各裁判官の人事がどのように動くかによって,判断できる。もちろん忘れてはならないのは,こうした画期的な判決がでるのは,原告の人たちの素晴らしい活動があったことである。

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