赦しの文化

2009年12月1日

日弁連会館で開催された「長期受刑者の社会復帰への途を探る 市民集会」に岡山弁護士会館でのライブ中継で参加した。

無期刑確定者で年末の収容者平成10年頃から増加の一途を辿っている。昨年年末には1700名を越えている。無期刑の言い渡される件数の増加と,仮釈放の減少がその原因となっているようである。その背景には,仮釈放後の生活の場が確保できないということがあるようである。

無期刑を受けるようになる犯罪は殺人などの重罰に限定される。殺人事件の被害者が被疑者の親族である場合が50パーセント,面識がある人の場合が40パーセントと被疑者と何らかの関わりのある場合が90パーセントとなっている。その人との関わりのある周囲の人々が被害者であれば,憎しみの渦巻いている社会に復帰できる環境がなかなか形成されないことは容易に想像できる。

今日の報告の一つに,アメリカでおきたアーミッシュの集団の人たちに銃撃して,多数の死者をだした事件の話があった。その犯人はその場で自殺していた。この被害者であったアーミッシュの人たちはその日のうちにその犯人の遺族のところへ出向き,赦しの気持ちを伝えたのである。しかし,そうはいっても何の心の痛みも感じていなかったわけではない。自分の憎しみの心と闘いながら,その人たちの「文化」として赦すという態度を取ったのである。こうした気持ちは,文化のなかで育ってくる。今の我が国の状況をみると,この赦しの文化とは逆の文化が刑事事件のなかで大きくなってきているのではないかと思わされる。そのことが長期受刑者の社会復帰を困難にし,長期受刑者収容者を増加させ,現実の無期刑の言い渡しも増加してきているのではないだろうか。

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