この寒空に

2009年12月18日

前にも書いた野宿生活者の窃盗事件について判決があった。判決は,求刑どおり罰金20万円であった。但し,その20万円は,1日5000円に換算して勾留されていた40日を刑の執行を終えたこととするとの味な判決である。つまり,罰金20万円が言い渡されたものの,その支払いは既に終えたこととするというのである。手錠をかけられ腰縄で拘置所の担当者に両側から夾まれて法廷にはいってきたが,判決の言い渡しが終了してもその手錠ははずされたままで,法廷から自由になって出て行った。これから拘置所に戻り,荷物をもってでてくることになる。今日は,風は冷たく,その冷え込みが強い。彼の通帳には,逮捕後に年金の入金があったはずではあるが,きょうはもう銀行に行って引き出すことはできないのではなかったか。彼には住むべき家はなく,これからも野宿生活を続けなければならない。自由になったが,かれの命の危険度は増したと言って良いのかも知れない。

裁判官は,判決のなかで,彼の生活態度をきびしく責めていた。年金をもらいながら,野宿生活という悪い生活態度を続けていたと指摘していた。しかし,現実の問題として,70歳の高齢者が年金6万円の収入だけでは,新たに住む場所を確保することは難しい。賃貸するには,敷金など一定のまとまった資金を必要とする。その資金がないかぎり新たに住居を借りることはできない。たとえ,なんとか住居を確保できても,賃料と生活費を6万円でまかなわなければならない。いったん,野宿生活者になると元にもどることは困難となる。一概にその生活態度を責めることはできない。懲役刑ではなく罰金であり,しかもその罰金は未決算入で支払い済みとなり,なんらの負担がない結果に終わった。この寒空にあなたは自由ですよと釈放されても,彼は今日のこの夜の冷え込みをどのように過ごしているのだろうかと気になっている。逮捕前に世話になっていた野宿生活者を支援する会のところで,支援を受け,今日の寒さをとりあえずしのいでいることを期待している。

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