貸金業法改正の完全実施を。

2010年1月10日

破産宣告の事件が平成元年に1万件を越え,それが平成15年には24万件にまで達していた。高金利,過剰貸し付け,過酷な取り立てがその病理を産む要素であった。しかし,利息制限法を越える金利の貸し付けは,原則として不当利得となるという判断(基本的な最高裁の考え方は従来から同じ)が確立され,ついに貸金業法,出資法の制限利率と利息制限法の制限利率とを同じにして,いわゆるグレーゾーンをなくした。これに貸し付ける側が過剰貸し付けにならないように収入との関係において貸し付けの総量規制を加えた法改正がなされた。その改正の完全実施が今年の6月に迫っている。この報道が今朝の朝日新聞でなされていた。

この報道によると,業者側からの完全実施を見送る業界からの強い働きかけがなされていて,完全実施に黄信号が灯っているとのことである。法改正が実現した以降,不当利得返還請求を基本的に認めた最高裁判例とともに現実には破産宣告申立件数は大きく減少してきた。適正な貸し付けの実現によって,健全な家計をつくり,平穏な家庭を築いていくことを社会として可能にしたのだと言える。しかし,業界からの反論は,融資を必要とする人に対する貸し付けを制限することによってやみ金が増えるなどと主張されている。やがて,支払えなくなることがわかっている人に対して,高金利で貸し付け過酷な取り立てをするのがやみ金である。そうした融資を必要とする人に対して,消費者金融の貸し付けを前のようにしていいものだろうか。再び元の黙阿弥になりはしないだろうか。返済することによって生活が成り立たなくなるひとへの融資は,もっと公的なものにすべきであって,これらの人からの高金利を取得して業として成立させようということはまさに今問題とされている「貧困」ビジネスの育成であるといわなければならない。

いまなお,破産予備軍は200万人はいると言われている。この問題が解決したわけではない。そのことは,日頃の相談業務のなかで実態として感じている。改正法の完全実施を見送ってはならない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Links

Calendar

  • 2024年7月
    « 5月    
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    293031