取調可視化への前進?

2010年2月2日

取調の可視化については政権交代前に参議院で2度も民主党が議案提出して可決している。菅谷さんの再審無罪事件を契機として,国民的な関心も高まっているといえる。しかし,民主党政権になってもなかなかこの可視化が実現しようとしない。警察庁,検察庁,国家公安委員会などの抵抗があるからだ。中井国家公安委員長は取調の可視化には新たな別の捜査手法が認められなければ可視化に踏み切るべきでないとして消極的態度をとってきていた。そして,「捜査手法,取調の高度化を図るための研究会」を発足させて総合的に検討することになった。

日弁連は,直ちに可視化を実現がその基本的な立場である。しかし,可視化の法律は国会で議決されなければいつまでも絵に描いた餅である。国会に早期に提出させるためにはどうしたらいいのか,何をすべきなのかを考えなくてはならない。別の捜査手法などと引き替えに可視化が認められるべきであるか否かなどと言う論議には本来組みしないのである。だとすれば政府の研究会には反対であり,参加すべきではないというのが筋ではある。非常に悩ましい選択であったとは思うが,日弁連は可視化を無条件に直ちに実現すべきであるとするのがその立場であることを明確にしてこの研究会に委員を送ることにした。この研究会で日弁連の考え方を強く述べて,可視化の実現に向けての方向性を明確にさせることが政権与党の決断を迫ることにつながるのではないかとの判断であろう。

このような動きに徹底的に反対すべきだとの立場もあった。昨年の人権大会の可視化推進決議において,こうした議論をすることは他の問題ある捜査手法を是認することに繋がるから反対であるなどという意見であった。政権与党と考えが近いところにあるときは,権力側とのつきあいは慎重にしなければならない。一方的に拒否する態度は良くないし,かといって,すり寄っていく態度は非難されなければならない。今回は,日弁連の立場をまず明確にしたうえで,政権内での議論のなかで可視化への方向を確たるものにする目的で委員を推薦したことは,評価すべきであると思う。

可視化に向けては議員連盟ができたが,小沢さんの取調問題に思惑を持って取り組まれている面があるとしたら,動きは気をつけなければならない。純粋に人権問題として真剣に取り組んでもらいたい。なぜ可視化なのかを事実経緯をきちんと調べてみれば,えん罪の温床を断ち切る大きな力となりうることであるということが明白であるからである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Links

Calendar

  • 2024年5月
    « 5月    
     12345
    6789101112
    13141516171819
    20212223242526
    2728293031