トンボの羽は6枚

2010年2月14日

YMCA,ワイズメンズクラブが主催する子どもの問題を考えるシンポジュームがあった。パネルディスカッションが行われ,私がコーディネーターを務め,児童虐待問題に取り組んでいる人,少女たちから一日300件以上もメールによる相談を受けるという産婦人科の医師,親子のあり方を「訓練」するという親子関係を考える活動をしている人,そしてYMCAの総主事を務める人のすべてのパネリストがワイズメンズクラブのメンバーによる企画であった。事後のアンケート結果によると総じて好評であったので,役割を果たせたと安堵している。

このパネルのやりとりのなかで,トンボの絵がきちんと描けるかどうかが話題となった。パネリストのなかにトンボの羽を6枚描いた人がいた。トンボの羽,足,形がいざ描こうとしても,きちんとかける子どもたいはいまどき珍しいようである。自然とふれあう実体験がないのだ。そんなやりとりをしているのを聞いていて,小学校5年生の夏休みのことを思いだしていて,ついその思いでの一コマをしゃべってしまった。テーマとは全く関係ないことであった。夏休みが始まるとすぐにトンボ捕りを始めた。夏の初めの頃に取れるトンボと終わりごろに捕れるトンボとは種類が違ってくる。それぞれの種類の雄と雌をそろえた。セロハンを貼った箱に整理して夏休みの宿題としてだしたところ,何かの賞をもらった。トンボだけの多くの種類を雄雌集めたのが評価されたのだ。夕方になると池の周りを素早い早さで回っているオニヤンマ,すばしっこいしおからとんぼ,夏の終わりになるとアキアカネが集団で少し高いところを飛び出す。庭の日陰の涼しげなところで羽を広げたりしぼめたりしている羽黒トンボの様子は見ていても楽しかった。しおからとんぼは、何かに停まった瞬間に後ろから一気に素早く網をかけて採る。これはなかなか技術がいることであった。

こうして,このトンボの標本をつくったが,ある日それを見ているとそれはトンボの「死骸」なのだと思うようになり,急に残酷なことをしてしまったと思われたのだ。その標本を見るのも嫌になっていた。翌年からは昆虫採集は止めた。パネルの途中で思い出したのはこの時の何ともいえない,少年時代の気持ちのことであった。そこでつい,トンボの昆虫採集の話に少し触れた。コーディネータとして話の展開に集中しておかなければならなかったはずであったが,頭の中はとんでもない50年以上も前の過去の思い出の世界に飛んでいた。

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