新司法試験の発表があった。私の事務所でアルバイトしながら,今年の試験に挑戦した受験生がいる。合格の知らせを待っていたが,その連絡はない。厳しい結果であったのかもしれない。
「新司法試験合格発表
☆法務省は9日、法科大学院の修了者を対象とした新司法試験の2010年の合格者
を発表した。8163人の受験者数に対し、合格したのは2074人で、合格率は
25.4%。前年の27.6%を下回り、新司法試験が始まった06年から5年連
続で下降し、過去最低となり、政府は法曹人口拡大の計画として「2010年ごろ
に年3千人」とする方針だったが、今年を含めた最近3年の合格者数はいずれも2
千人台にとどまった。発表によると、法学部を出た人向けの「既修者コース」(2
年制)を修了した人の合格率は37.0%。一方、3年制の「未修者コース」修了
者の合格率は過去最低の17.3%にとどまった。合格者は24歳から66歳まで
で、平均年齢は29.1歳。合格者のうち、1回目の受験で合格した人は1183
人だったと報じる朝日記事。」
合格者が2000名止まりなのは,現実の合格レベルの実力の結果がこの程度だったのか,それとも政策的配慮から決められたものなのか。合格率が25パーセント程度であれば,法科大学院が受験勉強から離れて豊かな感受性を持った多様性のある優秀な法曹を誕生させる制度とすることの目的から離れてしまう。法科大学院にはいっても厳しい受験勉強は現実に必要とされる。さらに,合格して司法修習を無事終えても,今度は就職がままならない。魅力のない分野となってきている。私たちのころは約20000人の受験生がいて,約500人の合格者であった。しかし,受験回数に制限はなかったし,学歴・年齢に制限があるわけでもなく,法学部を卒業しておくことも必要なかった。まして,法科大学院を卒業する必要もなかった。合格者の平均年齢もほtんど変わらない。むしろ高くなっているのではないか。どちらの制度が平等なのか,今の実態を前提とするかぎり疑問がわく。法科大学院に進学するためには少なくとも大学を卒業しておかなければならない。そののち,法科大学院に進学する。この授業料の負担も結構大変である。そして合格して司法修習生になっても,今期採用者からは給与もでなくなる。普通に受験して合格して法曹になるために多くの時間と多額の費用を必要とする。こうした負担が可能な人だけしか法曹になれないことになる。司法試験を目指すことは、不確実なギャンブルに挑戦することになる。いびつな法曹像ではないだろうか。明日,5時からさん太ホールで,司法修習生の給費制廃止反対の緊急集会が開かれる。