今日のある番組のニュースの解説で,武富士の破綻は,あたかも弁護士が金儲けのために過払い請求をしてきたことを原因とするような話をしていた。さらに,それは借り手側の利息制限法を貸し主側の貸金業法に優先した判断を新しく最高裁がするようになってからおきたなどと極めて不正確な説明をしていた。利息制限法に反して支払った金額は,法律上の原因無くして支払ったもので,不当利得として返還しなければならないし,過払い利息分は元本に充当して計算して過払い分の返還を求めることができるというのは30年以上も前からの最高裁の考えであった。そのうちに業界保護のために利息制限法を超える上限金利を貸金業法において定めた。任意にその超過分を支払えば,その不当利得になる利息制限法を超える金利であっても返還の必要がないという法律なのであった。このおかしな範囲の金利をグレーゾーンというのである。本来不当利得として返還すべきものについて,任意に支払っていれば返還しなくてもいいというおかしな法律となっていたのである。
しかし,高金利で貸し付け,激しく返済を迫り,過剰な融資が行われ,いわゆるサラ金渦といわれる悲惨な被害が多発し,クレサラ被害による自己破産の申立が年間20万件を越す結果となった。そのなかで,最高裁は次第に「任意」という条件を厳しく審査するようになり,ついには武富士などが一般的に契約に入れている期限の利益喪失約款の存在が任意性を失わせるという判断をしたことがきっかけで,それまで苦労しながら裁判で戦ってきた弁護士らにとって大きな武器が生まれた。その戦いの歴史は,消費者弁護士といわれた人たちの粘り強い運動と裁判での成果として残るものである。こうして,借り手が利息制限法によって保護されることになり,被害救済が一挙に進んだのである。つまり,やっと原則的に以前の最高裁判例が実質的に生きるようになったのである。この成果だけを使って,依頼者の真の利益を後回しにして事件処理している人たちが,最近の債務整理をめぐって問題を起こしているのである。今日のニュースの解説は基本的に誤っていた。