この11月1日から,裁判所法の改正が施行となり,司法修習生には給与が支給されなくなる。給与は貸与制となり,申請によって借りることができる。この申請は70%を超える人が申請しているようである。修習期間中は,修習専念義務があり,他の職務に就くことができない。大学の法学部,法科大学院を卒業した後に司法試験に合格して後の1年間の修習である。これだけの期間の出費に耐えることのできる者しか法曹への道は開かれない。そうして、生まれた法曹のみによって司法が支えられることになる。正義を執行するという気概をもった法曹が育たなくなる怖れがある。そうした弊害を生まないために,給費制の存続を日弁連は強く求めて運動をしている。
給費制の必要性は,国民の理解を得られるところまできた。各政党の法務,司法関連の政策担当者レベルでの合意はほぼ得られた状況であるときいている。あとは,与野党がぶつかり合い,かつて与党にいた公明党が微妙なバランス感覚をはたらかせながら対応している状況下で,短期間で法改正をなしとげる与野党一致の行動が残された10日間ほどのうちにできるか否かである。審議を省略する方法として、当面、施行期日の変更で乗り越える知恵も考えられているようである。この法律ばかりではなく,激しくぶつかり合うばかりでは,何の成果も得られない。国会で必要な議論をきちんとして,速やかに対応すべきことは,互いの政党の独自性をアピールするばかりでなく,国会審議においてしっかりとした成果をみせてほしいものである。
この状況を訴訟費用敗訴者負担制度の廃止を実現した時のことと重ねあわせて考えさせられた。この時は,与党が敗訴者負担制度の新設を法案として既に国会に提出していた。委員会審議においても可決目前の法案であった。しかし,この法案は経済的弱者に厳しい法律であると市民運動が盛り上がり,ついには審議しないで廃案となった。政府提出の法案が審議に付されたのに通らない珍しいできごとであった。与党の根回しをして、最後には審理にはいらない処理に導いたのは公明党の漆原さんであった。今回は,審議にはいってもらってなんとか給費制を継続してもらいたいのである。今回も公明党の動きが鍵を握っているだろうか。司法試験の受験指導を受けたことのある弁護士でもある公明党漆原国対委員長の「弁護士の魂は捨ててはいないつもりだ」と言われていたあの信念で,危ういこの政治状況のなかで,今回もなんとか給費制維持を実現するキーパーソンになって欲しいと思う。