弁護士自治

2006年8月10日

毎年秋に中国5県の弁護士が集まり大会を開催する。法律上は各弁護士会と日弁連の二重構造なのだが、さらに慣習的にこの間に位置するブロック組織がある。この中国弁護士会連合会の大会を中弁連大会と呼んでいて、今年は鳥取で開催される。そしてこの大会では宣言、決議がなされ、各弁護士会提出議題についても討議される。通常こうした大会では、実質討議はなく、お膳立て通りに進行するのであるが、この大会は実質的討議をすることを伝統としていて、激しく修正意見がでたり、反対討論が成されたりする。rnrn宣言、決議についてはあらかじめ各会で検討し案がだされ、それを宣言決議起草員会で審議し、そこで確定案を作成して理事会に提出し、その理事会が宣言案などを上程するというシステムになっている。今年はこの起草委員になっている。きょうはこの宣言、決議の検討、議題の選択などの作業を5県の弁護士会をテレビ電話でつないで会議をした。5人の弁護士が一同に会して日程をとることが困難であり、こうしたシステムで会議ができることは大変ありがたい。しかも、この通信費は1時間ぐらい使用して1000円程度であったので、経費も助かる。rnrn今年の宣言、決議の内容は、弁護士密告制度だと言われている通称ゲートキーパー制度の立法化を阻止する宣言、思想信条の自由をおかすことになる共謀罪新設に反対する決議、鳥取からは話題となった国内人権機関の設置に関する宣言、島根からはプルサーマル計画を巡り原子力政策における地方自治体の役割に関する議題などが提出予定として案が寄せられた。次期国会でただちに問題となる事項ばかりが盛りだくさんであり、岡山からは3つの議題提案があり、とても大会で審議できる数ではない。日頃から取り組んでいる問題に関してアップツーデートにとりあげようとするとどうしても欲張りになる。これから何回か会議をして整理し、大会に上程できる内容にしあげていかなければならない。rnrn弁護士会は強制加入団体である。そして、国家の監督を受けない自治組織である。そのことによって、人権擁護と社会正義実現の観点から他の機関から干渉を受けることなく活動できる。政府に対しても意見をきちんとだしうるのはこうした組織的裏付けがあるからだ。昭和22年9月1日からこの自治を保障した弁護士法が施行された。国家が総動員体制ととなってかつての戦争が遂行された。国家において平和を守るためにちんとした抑制を図ることのできる体制が必要であるという考えから議員立法で在野の法曹に権力に流されない意見が国政に反映されるよう、弁護士自治が生まれた。今、規制緩和の流れのなかで、株式会社などで法律相談ができるようにすべきであるとか、強制加入制度を廃止し、だれでもが幅広く弁護士業務ができるようにすべきであると意見がだされて検討されようとしている。人権を営利目的に誰でもが扱えるようにするためである。そうなったとき、次の中弁連大会で準備しているような政府の施策に対抗するような意見をだして、あるべき法制度の意見を言えることになるだろうか。何よりも平和を守るための組織であるはずである。ゲートキーパー法によって弁護士も監視下におき、弁護士自治を奪おうとしているというこんなところにも着々と戦争への準備がなされていると考えるのは勘ぐりすぎであろうか。

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