ちょっととまどいのあることだった。昨日,被疑者国選弁護人に選任された。夜,7時頃からの接見をすませ,その状況を家族に連絡した。家族は県外のしかもかなり遠方に住んでいた。そして,きょう,こちらにでてくるとのことであった。私が連絡する前に既に弁護士会に連絡して,弁護の依頼の方法などを相談するつもりだったらしかった。弁護士会の法律相談を受けてその後に私の事務所に寄った。
そこで,私に私選弁護人として働いて欲しいとの強い要望があった。国選弁護人だと弁護人としてすべきことをしてもらえないのではないかとの疑念をもっているのかもしれない。私は,国選弁護人と私選弁護人とでやることに変わりはないこと,本件においても同様に弁護人として必要なことはきちんとするので心配ないことを伝えた。しかし,それでも私選をというのである。遠方からこられて私選弁護人に依頼してかえることが仕事だと思って来たのかも知れない。一瞬,そこまで言うのであれば,それが可能な手続きを考えてみようと思った。しかし,それはやはり気持ちが落ち着かない。そんなことをして,私の方から国選を私選に切り替えさせたなどと思われることが嫌である。もういちど,国選と私選とで弁護人の活動に変わりがないことを説明し,私選にならなくてもこの件については一生懸命やらせていただきますと話をし,最後には納得していただいた。なお,国選弁護人になりながら弁護人から私選への変更をすすめるなどのことは明らかに弁護士倫理に反する行為である。小雨のなか,私との打ち合わせをすませて,とぼとぼと留置施設のある方向に荷物を提げながら歩いていった母親の息子に対する懸命な気持ちがさびしく伝わってきた。
逮捕されている子どもに対する思い入れの強さが哀しく思える。