何が秘密か

2010年11月11日

尖閣諸島衝突事件に関して,ビデオを流出させた犯人が名乗り出た。一斉にマスコミは,この流出を是とするか否とするか街頭の意見を聴いている。また,学者と称する人々の意見を紹介し,あたかもビデオ映像を流出させた行為を英雄的にとらえる論調を煽っているようにみえる。

しかし,本件事故は当初から,中国側の漁船がぶつかってきたものであるとの見解は,政府側の認識として明らかにされている。ぶつかってきていること自体は秘密ではない。このことが隠されているわけではない。この証拠となるのが今回のビデオである。刑事事件の捜査資料が簡単に公にされることがないのは当たり前のことである。さらに外交交渉上,ビデオ映像を公表すべきではないというのが外務省の立場であって,それにも関わらず,公務員の立場でこれを公表したのであるから,どの構成要件に該当するものと考えるかは選択肢がいろいろとあると思われるが,違法と評価される行為であるのは明確である。これは,大前提とされなければならない。国の外交交渉を著しく危うくし,国の信用を貶めた許されない行為である。

今回の事件では,どんな情報でも簡単に全世界の不特定多数の人に向けて簡単に発信できる情報社会であることを知らしめられた。平等に情報に接することができ,例えば北朝鮮,中国のような情報閉鎖社会においても確実に情報の伝達がなされ,民主主義社会のうねりを生む力を持っている。しかし,いかなる情報も今までのマスコミと同じ権威をもってその信頼性が担保されないまま流通する。そのような社会にいることを前提として,国家の秘密の管理体制が組まれなければならない。

冷静に,秘密にされていたのはビデオ映像そのものであり,中国がぶつかってきたことではないということを整理しておくべきである。そのうえで,この段階でビデオ映像の公表がなされるべきなのか否かの論議があるべきである。これは,外交政策の問題である。今回,ビデオ映像を流出させた行為は,現政権にダメージを与えようとする行為以外に正当性を見出す理屈は見あたらない。

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