日弁連の衛星放送をつかったライブ研修「行政訴訟事件特別講座」があった。午前中だけ,この講座に参加した。いま,国税訴訟,産廃処分場許可取消訴訟などいくつかの行政事件を抱えていて,なにかヒントになることはないかとの思いで参加したのである。
日本では,極端に行政事件は少ない。日常生活のなかで行政との関わりは深い。いや,関わり無しには生活はできない。行政事件が少ないということは,それらの行政行為のほとんどは,司法の法的判断にさらされることがないまま終わっていることになる。行政が自分の解釈で法を適用して処分をし,その当否に関しては第3者として判断することがないということなのである。お上のすることはすべて正しいという観念が我々のなかに基本的にあるからかもしれない。
しかも,数少ない司法で争われる例についても基本的にまずは行政のやっていることは正しいとされて手続きが進む。従って,住民側の勝訴率は10パーセントに満たない。勝っている事案の多くは,法が整備されている情報公開をめぐる裁判である。多くは,行政の「裁量行為」として行政の判断に任されている範囲の問題だとして違法性を認めるまでに至らないのだ。行政の行為もきちんとその妥当性について司法の判断をもっと受けることがあっていい。今日の講演の内容の一部に,この裁量行為だと逃げる行政の主張を違法性の判断の対象にしていく工夫などが述べられ,今j,受任している事案にとってもとても参考になった。平成16年に行政訴訟法の改正があり,行政訴訟がやりやすくなったといわれたが,この法改正によってもあまり増加していない。さらなる改正が必要とされている。
今日の1講の講師であるY弁護士は,かつてパソコン通信でよく意見交換をしていたことのある弁護士である(15年ぐらい前?)。そんな仲間だったので,一度ぐらいは会ったことがあるはずであるが,ライブ中継の映像でも「ああ,あんな人だったのだ」と初めて会う人のような感覚であった。行政事件を手がけることを生きがいとし,そのために活動の地も何度か変わっている。あのころの小さな仲間のパソコン通信は,今はおおきなメーリングリストに発展している。そのメーリングリストのはじまりがこれであったことを知る人はほとんどいない。