無名塾の「炎の人」を観た。ゴッホを演じるのは仲代達也である。今日が78歳の誕生日とのことでカーテンコールのあと観客がたって拍手をするという企画があった。この人は狂気の人を演じるには適した人だ。
11月23日には,ゴッホのポストマンを兵庫県立美術館で鑑賞していた。このモデルになった人も今日の登場人物である。最近のテレビ番組でも,ゴッホとゴーギャンの関係について明らかにするものがあった。パリのモンマルトルでゴーギャンとゴッホが一緒に住んでいたアパートを確認したことがある。この二人の深いところで互いにその才能を理解しあいながら,ついに別れていくストリーのなかで,ゴッホの孤独で優しさのあった生涯が演じられた。登場人物のひとりモリゾの絵もあちこちの美術館でよくみかけていた。印象派が衝撃をもって登場したころの物語である。舞台に登場した絵も,ほとんど現物をみたものばかりであった。
ゴッホといえば,糸杉,,,。そして狂気の人と印象づけられてきていたが,そうではなく,実は緻密なデッサン力の基礎をもち,色彩にこだわり,被写体の内面を表現しようとした繊細な神経の持ち主であったことが表現されていた。演劇だと思いながらも,そこにでてくるディテールのホンモノに接したことのある記憶が,極めてリアルなものに感じさせられ,19世紀のその現場に居合わせている感覚を味わった。