きょう、売掛金請求事件に関して証人尋問があり、結審した。会社に対しては既に判決を得ている。しかし、その会社は実質的に倒産状態にあり、このままでは回収は困難である。関係している会社役員の対応に不審なことがあり、会社とともに取締役を第三者に対する責任として並行して訴訟を起こしていたのである。この種の裁判は、担当する裁判官によって、大きく判断が揺れる場面であると実感している。比較的、簡単に取締役の責任を重くみて、請求を認める立場と厳しく請求の成り立つ要件を厳格に吟味する立場である。若いころ、この規定をつかって、困難であった売掛金を回収できた甘い経験があって、私はこの要件については検討することが多い。
この依頼者の会社の経営者は、私の同級生である。そんなよしみから、なんでも気軽に相談してくる。本音を話しながら打ち合わせができる気楽さがいい。被告となった会社の調査を始めて、えっと思った。会社の役員の就任状況を調査していると、かつて破産事件の管財人をしたことのある破産者の関係者であったのである。この破産事件は、珍しい債権者申し立ての破産事件であった。初回期日に出頭して被告席に座っていた彼は、関係者に私のことは知っていると話していたそうだ。私も名前を聞いただけで最初から記憶がよみがえっていた。破産事件をめぐって管財人として激しく対立したことがあったからだ。だから、今回の裁判も責任追及できる事案であるとも確信を持って始めた裁判であった。被告席でどんな思いで私をみていただろうか。しかし、彼はその初回期日に出頭しただけで、最後まで出頭しなかった。真相がわからないままである。