哀しい「父の匂い」

2011年7月29日

昨日に続き、養育費関係の調停事件。離婚の際には養育費の支払いについては惜しまない態度であったため、一日でも早く離婚の手続きをすませるために、協議離婚に応じた。しかし、一定の金額の養育費の支払いはあるものの約束した金額には届かない。離婚手続きのなかで傷ついた心は癒されなく、養育費などを求める調停申し立てをしていた。3回目の期日であったが、なんとか調停が成立した。当初の予定の金額を支払うという調停であった。

これで、一応の踏ん切りはついた。子供がつい最近、父親のところに会いに行った。母親は、自分とのつながりは消えても、子供と父親との絆は持ち続けて欲しいと願っていたので、この行動は歓迎すべきことであった。この子供は、母との生活の場である新しい住居の鍵と父と一緒に住んでいた使う予定のない当時の家の鍵とを首からかけていた。父とのつながりを自分で確認する道具でもあった。父親のところにでかけたら、その父は「いらっしゃい」と出迎えたそうである。かつて自分の使っていた部屋は完全に片付けられていた。「お帰り」とのかつての言葉ではなく、まさに客扱いであり、自分の居場所がなくなっていたことに強いショックを受け、泣きながら帰ってきたそうだ。しかし、それでも居間にあったソファのクッションを持ち帰ったそうである。父の匂いがするとのことである。きょうの調停で、この鍵を返せとの相手方の要求であった。別れた妻は、使うはずもない鍵を返すにはなんらのわだかまりもない。しかし、このようにして父との絆をなんらかの形で持ち続けたいと鍵をじっと持ち続けている子供から、この鍵を取り上げるのはなんとしても残酷と思っている。調停は、とにかく終わった。しかし、この鍵のことをどのように子供に伝えるべきか、母親の新たな悩みである。

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