司法修習生の給与が貸与制に

2011年8月5日

政府は、司法修習生の給与制を廃止し、貸与制に移行することを決定した。昨年から貸与制に移行することの法律が、実施に反対論が多くでたため、その実施が1年間延長されていて、その延長は今年限りになったということである。
司法試験に合格し、司法修習を終えて法曹資格が得られる。長い間、司法試験合格後の司法修習期間は2年間であった。私も2年間の司法修習時代を過ごした。この2年間は修習専念義務があり、アルバイトなどはできない。給与がでるのだから当然といえば当然である。しかし、司法改革のあと、司法修習期間は1年間となった。修習すべきことが減ったわけではない。司法修習生に給与を支払う司法予算が足らないというだけである。そして、こんどは、司法修習を終えれば多くの収入を得られることができるのだから司法修習生に給与を支払う必要はないという論理で、貸与はするが給与としての支払いはなくなる。

司法という国家機関を担う法曹を国が育成するというのが今までの理念であった。この理念を放棄するというのが貸与制への移行である。弁護士は在野法曹として司法機関を担っている。司法修習という法曹養成の場でも国からの給与で生活し、修習する。これは修習の意識のうえでも、国民によって育成されているという自覚につながり、日頃の業務が司法の役割を担う公的な仕事であるという意識を育てている。それが、一つの収入を得るための職業を選択するための司法試験は関門というだけの意味しかなくなる。

法学部を卒業し、ロースクールを卒業して司法試験受験資格を得て、さらに厳しい司法試験をやっと合格してもさらに強制的で1年間の無給の司法修習を終えなかえればならない。その間に多額の負債を背負うという人も少なくはない。こうした経済的に困窮した人々は法曹になって経済的なことを考えないで仕事に専念することは難しくなるだろう。まして、弁護士の就職難の叫ばれている昨今である。こうした世界に、飛び込もうという人は限られてくるだろう。このように、現実的にすでに歪んだ世界になろうとしている。

私の場合、2年間働いていたあいだに天引きされた共済組合の掛け金は、今や年8万円の年金として支給されるようになった。このわずかではあるが共済金の支払いを受けるごとに、あの修習生時代を思い浮かべ、仕事の公共性を自覚させられるときでもある。

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