憲法は,権力の行使を制限することがその本質的な性質と言われている。従って私人間の法律関係には適用されないとされている。しかし,この基本人権の擁護,国民主権,平和主義の憲法秩序に反するような私人間の契約の効力は否定される。この効果を憲法の直接適用説,あるいは原則通り間接的適用説などの考えによって論理づけようとされている。こうした憲法論議を3月30日,31日の京都での全国先物取引被害研究会で民法学の山本敬三京都大学教授の講演で聞いた。階段教室での講演であり,久しぶりに大学の講義を聴くという新鮮な感覚であった。rnrn憲法は今年で施行60周年,1987年5月3日に発生した朝日新聞阪神支局襲撃事件から20年目を迎える。私法の分野にも憲法的考えを取り入れて基本的人権を守る憲法秩序を確かなものにしたいという京都学派の考え方には,悪徳商法への救済が軽視され,いつも中途半端で終わる現状の司法の民法解釈を前進させるものとして興味を持たせる。しかし,その肝心の憲法は,改正論議が国民の民意とは異なるところでなされ,容易に改正が可能となるような国民投票法が制定されようとしている。今の憲法は,国民主権,基本的人権の擁護,恒久平和主義は変えさせない基本原則として制定されたもので,もともと改正のしにくい硬性憲法なのである。しかし,いまこれが簡単に改正しようとの論議がなされていることが悲しい。rnrnドイツのワイマール憲法は,戦う民主主義だと言われている。司法の場でも積極的に憲法判断がなされてきている。しかし,日本では司法は,できうる限り憲法判断は避けようとしている。本来は,司法が憲法を守るためにもっと積極的な役割を果たさなければならないはずである。先の山本教授の考えの根底には,最高裁のそうした役割を期待したものがあると思える。rnrn朝日新聞岡山支局の建物は,石造りの砦のような雰囲気のある建物である。最高裁の建物を設計した人と同じ人の設計によると聞いたことがある。言われてみれば,最高裁の石の砦の雰囲気とよく似ている。最高裁は,憲法を守り抜くという砦とはとうてい思えず,国民の目を遠ざける砦としか映らない。朝日新聞岡山支局の建物は,あのテロ事件のような自由な言論を押さえようとする動きから守る言論の自由を護る砦の意味だと理解している。
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消費者被害救済にも憲法
2007年4月1日
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