検察官の職務

2007年2月24日

婚姻が解消された日から300日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定されるため,前夫の子と推定されることになり,当然戸籍の届け出もそのようになされる。しかし,婚姻関係の実質的破綻が先行し,その間に新しい人との関係ができれば,前夫の子と推定されることに不合理が生じることがおきる。このようなことがおきるのは必ずしも珍しいことではなくなっている状況から,民法の改正の問題がおきあがっている。rnrnこの民法の規定を正確にいうと,まず「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定される」(民法772条1項)。そして,「婚姻成立の日から200日後又は婚姻の解消もしくは取り消しの日から300日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定する」(同条2項)となっていて,2段階の推定の規定がおかれている。婚姻届がなされて初めて夫婦の間の性的関係が生まれ,離婚の届け出がなされるまで正常な婚姻関係があることが前提で初めてこの規定の合理性があると思えるが,事実上の離婚状態が長い間続いた後に正式な離婚届でが出され,既にそれぞれが新しい生活にはいっているよう場合ではもはやこの規定が適用される合理性がない。不都合なことが現実には結構発生し,それが社会問題となって民法改正への動きへとつながっているのである。rnrnしかし,検察官がこの規定を知らない事件処理をして婚姻中に懐胎したと推定される子を法の規定に従って前夫の子と届けたことを虚偽の届け出として起訴してしまった事件がおきた。民法の基本の基本を知らなかった検察官にまずはあきれた。この規定は,大学の法学部で学び,親族法に接していれば必ず触れる法であり,まして司法試験に合格しているのであれば理解していないはずはない規定である。基本中の基本の規定である。そして,社会問題となっている部分の問題であり,よけいに問題の所在には気がついてなければならない。この問題を見過ごした法の初歩的な理解の欠落にまずはあきれてしまった。そして,社会でおきていることに鈍感であったことも法的正義を実現すべき検察官としての見識を疑われる事件であった。検察官の起訴は,次席検事の決済を受ける。一人ならず組織のうえでもこの単純なミスを見逃したことは検察庁の組織的欠陥の存在を考えさせられた。このようなミスを犯したのは,本来は責任を問うべきことではないことをあえて外国人の犯罪として刑事責任をなんでもいいから押しつけようとした意図があったのではないかと思わされた。検察庁は,適正な法の執行をするためのチェック機関であり,社会性のなさとその機能を果たし得ていなかったことを大いに反省すべきである。rnrnそして,きょうは鹿児島地裁で選挙違反事件に関し,関わった12人全員に対し無罪判決がでた。自白を強要した捜査のあり方が判決のなかでもきびしく批判されているようである。検察官は,本来このような捜査を適正手続き保障の観点からきびしくチェックし,違法な捜査が行われないように指揮,命令する権限を持つと同時に,裁判手続きにおいても何が何でも有罪にするのが検察官の職務ではなく,適正な法の適用による正義の実現をすることが要請されているのであり,これらの機能を果たし得ていないことはこれまた厳しく反省されるべきである。検察官は無罪判決がでれば担当検察官は汚点であるとされ,評価がさがる。それ故有罪判決をとることが一番の目的となっている。えん罪の可能性を捜査側としていち早くみいだすことが高い評価を受けることでなくてはならないと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Links

Calendar

  • 2024年12月
    « 5月    
     1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    3031