不満足な和解

2007年2月20日

大変な日程を組んでいた。午後1時30分から県北の岡山地裁新見支部での民事事件,午後3時40分から岡山で刑事事件の初回期日であった。サラ金相手の過払い請求事件で,どうせ期日変更になるであろうといれていたが,変更にならなかった3時からの岡山簡裁での事件は,あらかじめ手配してもう一人の弁護士にお願いして処理してもらった。岡山,新見間は約85キロあり,高速道路を利用するとしても1時間30分の余裕をみておく必要がある。遅くてもも2時には新見支部を出発しておかなければならなかった。rnrn行きは昼食もどこかでとらなければならないので,少し余裕をもって出発した。そして,事務所をでてから新見支部につくまでの間,ポイント,ポイントで所要時間を計測した。帰りの際に到着時間を予測するためである。新見での事件は1時50分に終了した。すぐさま車にのって引き返し,ポイントごとに時間を確認しながら帰路を急いだ。途中のチェックでの予想のとおり,ほぼ3時10分までには事務所に到着することができた。刑事事件は,担当の前の事件がのびていて開始時間が15分ほど遅れたのでゆっくりと落ち着いて始めることができた。危うい日程をなんとかこなすことができた。rnrn新見では,本日結審予定の民事事件であったが,和解が成立した。和解が成立してもなんとなく後味の悪い事件であった。わずか1週間のうちに退職金のほぼ全額の被害にあったという先物取引被害事件で,和解率は60パーセントであった。業者の手口は,消費者保護が強化された商品取引所法平成16年大改正後の相も変わらぬ強引な勧誘と手数料稼ぎの悪質な事案であった。私は、100パーセント回復されても当然という評価をしていた。それが60パーセントの被害回復率での和解であることがまず納得いかなかった。和解であるから嫌なら拒否すればいいのだが,依頼者はそれでもうれしそうにこれでいいと満足し,出頭していた相手方担当者にまで法廷でお礼をいうのである。いかにいい加減な扱いを受けて被害にあったのかを説明してもまだ業者の方に結構信頼をおいているような感じだ。この事件は,当初相談を受けて代理人として示談交渉に入ったときに相手方の担当者が依頼者に「弁護士に言うな。私がいいようにしてあげる」などと言う言葉を真に受け,私にはその担当者との接触を秘密にしていた。そのことが交渉において決していい方向にいかないので弁護士に依頼した以上は,直接交渉しないように念押しした。ところが後日,この人の日記を証拠で裁判所に提出することがあったところ,私が注意したことに腹をたてていたようすが記載されていた。今日の和解も相手方担当者のおかげで和解になったのだと思っているのではないかと感じた。急いで岡山に帰ろうとしていると出頭していた相手方担当者と親しく話をし,一緒になって私を見送るのである。この事案,100パーセントの回復と慰謝料を請求してもいいくらいだとまで思っていた事案であり,怒りを依頼者と最後に共有できず,あるべき和解に持ち込めなかった意味で後味が悪かったのである。担当した裁判官も,取引をした人にも責任があると当初相手方の30パーセント程度の提示で和解させようとしていたことも気になったことであった。被害の本質を理解していなかったのである。私も厳しい言葉で本件被害の構造性について主張し、きょうの和解となった。こういう事案は依頼者に納得して頂けるなら判決を追及し、業者の責任を明確にしていくことによって、業界の体質を変えられる。こうしたチャンスを封印しての和解であったのだ。

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