弁護士過剰時代?

2007年2月9日

今年中に2000人の修習を終えた弁護士の登録が見込まれている。従来の司法試験合格組と法科大学院卒業生での合格組が一挙に登録することになるからだ。しかし、その就職希望の弁護士を全て受け入れることが困難であるとの状況である。つまり既存の事務所の採用予定人数より就職希望者の数が上回っていて、弁護士の就職難である。司法試験合格直後から、就職活動が熾烈になっているとのことである。rnrn法曹人口の大幅な増員は今回の司法制度改革の目玉であった。しかし、そのことによって人権状況がよくなるかといえばそうではない。司法試験合格者を増員し、弁護士にも競争原理を持ち込むことによって、人権が守られると増員論者は主張していたのである。本音は、企業で安く使える弁護士を確保したいという経済原則が優先の政策ではなかったかと私は思っている。増員することによって国家予算を増加させないために、司法修習期間を大幅に短くし、その修習生に対する給与も支払われなくなることになっている。つまり、法曹は公的に養成されて公的義務を果たす職務に就くという基本的な意識を希薄化させてしまったのである。法曹一元の理念とはかけ離れて、個別に養成を行うことが要求されてきている。そのため、新人弁護士を各事務所で是非引き受けるよう日弁連執行部は全国の会員に新人弁護士の採用を呼びかけている。rnrnこうして、弁護士になっていく者たちがどれほどの理想をもって司法試験に挑戦し、司法修習を学び、就職していくのだろうかと心配である。私も新人弁護士を採用する意思を明らかにしていない。しかし、人権擁護のために理想をもって弁護士になろうという人がいるのなら一緒にやってもいいと考えている。とりあえずの就職活動しか考えず、どれほどの収入がえられるようになるかだけを考えている人たちとは、自分の収入を減らしてまで採用する気にはなれない。従来、法曹人口は少なすぎるとは思っていたが、今のようなアンバランスな急激な増加は弁護士の質を低下させ、職務の公共性を希薄化させ、人権擁護のために働く弁護士の活動を圧迫するものになると私は急激な増員論に反対してきていた。正にそうなってきたといってよいのではないかと思っている。今、指導を担当している修習生たちは就職に不安を抱えながらもとても良い感覚をもって勉強している。良い就職先事務所で、いい仕事をするようになって欲しい。

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