殊勲!ゲートキーパー化阻止

2007年2月3日

開会中の通常国会にゲートキーパー法とも言われていた「犯罪収益流通防止法案」(仮称)が上程されることが決まっている。rnこの法案は、テロ資金や犯罪収益が国内外に送金されるのを防ぐため、金融機関や弁護士、司法書士、税理士などの各士業に疑わしい取引を警察(国家公安委員会)に密告することを義務づけるもので、日弁連は、弁護士に依頼者の密告義務が課せられることに強く反対してきた。当初の法案の枠組みは、届け出先を金融庁にするとの案であったので、政府与党の成立を目指す強い意向という政治状況をみて、反対の姿勢からやむなしとする方針に転換していた時期があったが、届け出先が警察庁であるということになり、一転弁護士会は司法制度の崩壊であるという危機感から強い反対運動を展開してきていた。金融庁への届け出というスキームのなかでも反対論が根強くあったが、政府の警察庁への届け出義務に変更したことが、徹底的に反対で戦うという方針転換に正当な理由を与えたことになった。私もこれで結果的に分かりやすい運動が展開できるようになったと思っていた。私が日弁連の理事のころ容認の方針を出した執行部にどうしても納得しがたい気持ちをもっていたからだ。rnrn今朝一番に事務所に日弁連から緊急連絡がファックスではいってきた。反対運動を直ちに中止し、あらゆる反対行動をストップしろという連絡であった。報告義務者から弁護士をはずすという方針が明らかにされたからだ。そして反対運動のためになされたカンパは返還するという内容であった。弁護士を依頼者の密告者に仕立て上げる今までの法案の危険性を訴えてきた日弁連の行動が功を奏したと言える。高金利のグレーゾーン廃止に続く日弁連の快挙といってよいであろう。刑事法の一部の学者が弁護士が密告者となるこの法律を何の危険性も認識できないで政府の方針を擁護する意見をだしていた。諸外国も同様の規定が既にあるなどと事実と異なる解説をするなど、正に御用学者の役割を果たしていた。そしてこの弁護士を密告義務対象からはずすという方針がでてもなお従前の政府方針を擁護する意見をだしていた。権力と対峙しなければならない弁護士が警察庁に密告しなければならない制度にしてしまうことがいかに危険な制度であるか認識できない刑事法学者は、今回の結果を恥をもって振り返るべきである。私は、理事会で成立必至の状況との執行部説明に、やむを得ずゲートキーパー法の承認をするという執行部方針を、これでいいのかと理事会で質問した。特に他から反対意見もでなかったので、最終的には執行部方針に賛成してしまっていた。しかし、やはりおかしいと思ったことは妥協せず、正義の実現を信じてきちんと意見をいうべきであったと反省をしている。いい結果に落ち着いて安堵している。しかし、この法案にはまだ危険性のある内容が含まれている。一切の意見をいうことを終わりにするのはまだ早いのではないか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Links

Calendar

  • 2024年5月
    « 5月    
     12345
    6789101112
    13141516171819
    20212223242526
    2728293031