社会正義の実現は警察の職務?

2007年1月27日

弁護士法1条には弁護士の職務として「基本的人権を擁護し、社会正義を実現すること」がその職務内容に規定されている。「社会正義を実現する」との大上段に構えたこの言葉は少々気恥ずかしい思いもあるが、我々の職務遂行に際して常に忘れてはならないバックボーンである。rnrn今日の夕刊に警察学校の卒業式があり、警察本部長は「社会正義の実現を目指して頑張ってほしい」との挨拶をしたことが大きく報じられていた。警察が社会正義に実現を目指すと言うことには強い違和感を覚える。この世の中は警察によって社会正義が実現されるようなことがあってはならない。そのような活動は期待されていないのである。警察は、憲法に定められた基本的人権を守り、適正手続きのなかで捜査活動や国民の安全な生活を守ることがその任務である。そのための強制権力を持っている。社会正義実現のためにとその強制権力が使われることがあってはならないのである。被疑者の黙秘権を保障し、自白を強いることがあってはならないのである。警察法1条には「個人の権利と自由を保障し、公共の安全と秩序を維持するため、民主的理念を基調とする警官の管理と運営を保障し」と規定されていて、警察に積極的に社会正義を実現する役割を期待していない。法に則り、適正な職務執行こそ望まれているのである。犯罪の検挙率は落ち込み、誤認逮捕があったり、違法な手段によって虚偽の自白をえるなど違法収集証拠による冤罪事件が発生したりしている現状を見つめ、厳正な法の執行を志すという訓辞こそが卒業式には相応しいのではないか。

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