岡山弁護士会会員の叙勲のお祝いがあった。岡山弁護士会の有志とその会員が日弁連の副会長を歴任されていたことから、当時の副会長の仲間の皆さんとの合同の祝賀会であった。今までの功績やその方の一生が本人の口からあるいは祝辞を述べられる方からつぎつぎと語られ、本人も言われるとおり結婚式と今後予定される葬式とのあいだに誉めちぎられる機会を得たと言う形であった。しかし、そこは口の悪い我々の業界であり、軽妙に皮肉をこめてちくりと言い放つ強者もいた。しかし、今日の祝いを受けた会員は信念を持って岡山にこだわり、常に新しい風を吹かせようと仕事をされていたことはまちがいない。rnrn我々の業界は、勲章を受けることを良しとしない風潮がかつてあった。勲章の授与は憲法上天皇の行為とされ、在野法曹が天皇から賞を受けることは、民主主義の精神に反し、在野性を疑われるという反骨精神がまだ生きていたからである。私も叙勲を断った会員を知っているし、叙勲を受けても恥じ入りる心情を訴えながら受賞された方もいた。私には、この叙勲問題については忘れられない思い出がある。もう15年以上まえの鳥取で開催された中国弁護士大会でのことである。岡山弁護士会提案議題で、勲章が官にはその評価が高く、民に対しては評価が低く、弁護士に対する勲位が官と同等に高めるべく働きかけをすべきであるという議題が審議されたのである。私は、この議題を見たときになんともいえないいやしい嫌悪感のようなものを感じた。当然議論百出の伝統ある中弁連大会なので反対意見がでるものと思っていたところ、反対意見もでず、予定された趣旨説明と賛成意見だけであった。議長は当時日弁連の会長をしていた来賓の中坊公平先生に意見を求めたところ、なかなか的を得た議題であるとこれまた岡山弁護士会に媚びを売るような意見がでた。中坊先生は、来賓という立場上このような意見を言われたのだと思ったが、私は、この中坊先生の意見を聞いたとたん、手を挙げ反対意見をいうことになった。自分の所属会が提案した議題の反対意見を述べるには勇気がいることではあったが、怒りのような感情が表にでてしまった。rnrn例年、中坊先生の取り計らいで中坊先生が経営していた京都の旅館で消費者問題のセミナーを開催していた。その年の夏にはそのセミナーでオイルショックの時に灯油カルテルの違法性を最高裁まで争った主婦の方の話を聞く機会があった。その人が「最期まで一緒に戦ってくれた弁護士さんたちに心の花束を贈りたい」と最後に言われた。私は、その言葉を聞いた時にこうした「心の花束」を自分の勲章にできる仕事をしたいものだとその時思ったのであった。その場には中坊先生も一緒にいらっしゃり、同じ話を聞いていたので、中国弁護士大会での中坊先生の賛成意見を聞き、すぐに反応したのである。弁護士は天皇からもらう勲章のために働くのではなく、正に「心の花束」のために働くのではないか、弁護士の勲位が低いのではなく、本当は他の民間の方の勲位がもっと低く見られているのではないか、勲章制度自体に問題がありはしないかといった疑問に答えることなく弁護士の勲位をたかめようなどという議論はおぞましいと反対意見を述べたのである。これを契機に一挙に反対意見が次々と述べられ、この議題は決議にはいらないまま2度と論議されることにはならなかった。決議に至らないこと自体異例なことであり、それが提案会からの反対が理由であったといいうことで、私にとっても思い出となった。その大会の議事が終了してトイレで中坊先生と隣同士になり、先生には失礼のほどを詫びた。決して議論に参加することのない来賓に無理矢理意見を言わせておいて、批判されるのだからたまったものではなかったろう。その日、こんなことになるとは思っていなかたのであるが、先生にマスカットのお土産を持参していたのでその夜部屋にお届けした。大山のふもとにあるホテルで最上階に宿泊されていたので、この大会が鳥取で開催されていたことを覚えているのである。rnrn形の勲章ではなく、これが私の勲章だと心のなかで誇れるものを持てるような仕事を目指したいと今日の祝辞のスピーチを聴きながら密かに考えていた。しかし、もし勲章をあげようかなどといわれたら、はっきりと要らないと言い切ることができるのだろうかと思ったりする自分がいるのも事実である。そんなことは心配する必要もないが。
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叙勲のお祝い
2007年1月13日
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