渡邊洋三

2006年11月23日

法社会学者渡辺洋三氏の訃報が今朝の新聞に掲載されていた。rn大学に入学し、1年生の時に2単位しかつかなかったがプレゼミナールという科目があった。いわゆる少人数のゼミなのだが、「プレ」という前置詞がついたのは入学したばかりの学生にとってはまだ本格的なゼミ形式ではこなせないという趣旨だったのであろう。私は、現在まで独禁法など経済法の分野で活躍されてきた木元錦哉講師(当時)のゼミをとった。そのゼミでは渡辺洋三さんの著書「法というものの考え方」(岩波新書)を題材としていた。法と言う正義があってその法を学ぶところが法学部であると漠然と捉えて法学部に入学したが、法は必ずしも正義ではないという事実が書かれていた。法が成立する過程は、統治する権力側と統治される側との力関係の衝突していく場面であり、法はその時の政治状況に様々に姿を変えていくものだと認識させられ、むしろ法は誰のためにどのように実現していき、それをどのように使うのかというところがもっとも重要なのだということを教えられたゼミであった。そうした観点から、毎回気になった新聞記事を持参し、それがどのような意味があり、これが今後どのように変化し、どのような結論となっていくかということを議論していくのである。とてもおもしろい1年間のゼミであった。私の進路を決めてくれたゼミだったかもしれない。rnrnその後も何度かこの本を読み返すことがあった。この岩波新書も改訂版が出版された。公害事件、消費者問題などについて追補されたのである。その時、弁護士として既に10年ぐらいのキャリアを経たころだったろうか、その記載内容が私なりに不正確ではないかと思われた箇所があった。私は、学生時代に出会った忘れがたい本の著書のことだったので、その意見を書いて渡辺先生に送った。渡辺先生はそのことに対してきちんと丁寧な返事を書いて送っていただいた。とても誠実な方だったのだと思う。訃報によると先生は80数才で亡くなられたのだから先生が40才ぐらいのときにこの本に初めて接したことになる。名著だったのだろう。訃報のなかでも紹介されていた。

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