数年前,どこから運ばれてきたか庭に野バラが生えてきているのに気づいた。強いトゲのある葉だけの木であった。せっかく生えてきているのだから切らないでそのままにしておいた。毎年どんどん蔓を伸ばし,幹は太くなり大きくなっていった。そして昨年はたくさんの小さな白い花をつけた。その花のあとに赤い実を実らし,小鳥たちの絶好の冬の食料となっていた。
鉢植えから地植えしたミニバラは,こまめにみておいてやらないとすぐに虫がきたり病気になったりする。しかし,野バラは何もしてやらなくても勢いよく繁っていく。花と言えばこれでもバラかというほど小さな花でトゲをみなければとてもバラとは思えない。普通の5つの花弁の白い花で中央が黄色の花粉がついている。平凡なものである。
今年も連休にはいるころから白い花を咲かせ始めた。昨年にもましていっぱいの花である。今年は,この花が香るのである。朝,庭に面したガラス戸をあけると本当に甘い香水の香りが部屋まではいってくる。この野性味ある野バラから高貴な香りが漂ってくる。蜂が何匹も花から花へ忙しそうに飛んでいる。どこからかアゲハチョウもきて舞っている。部屋にいてもまさに香水に包まれた感じにさせる。これは驚きであった。バラの香水は野バラからとるとか。この話は間違いないと思わされた。
おそらく,これからほんの1週間程度の香りであろう。そのために狭い庭にこの野バラをそのままにしておいてやろうと思う。