「公正な価格,公正な競争」

2007年5月21日

次回の消費者法講義のテーマである。今日はこの準備に手間取った。事件としての蓄積の乏しい分野であるからだ。実務家は,実際に扱ったテーマを題材に話すのは説得力もあり,準備も容易である。しかし,経験の少ないことに関しては,内容的には学者に負けてしまうかもしれない。

この準備をしているときに平成2年ごろに石油やみカルテル事件で鶴岡灯油裁判を闘った主婦の方々から話を聞いたことを思い出した。日弁連の消費者夏期セミナーの企画を担当していたときで,公正な価格をテーマにシンポジュームをしたのであった。その時,その主婦の方々が「最高裁では敗訴したけれどもその論理のおかしいことは世間が認めてくれた。勝訴した高裁の論理がいかに説得力があるかだれでもわかること。私たちは,勝ったと思っている。そして献身的にここまで一緒に闘ってくれた弁護士さんたちに心の花束をさしあげたい」と話されていたことを思いだした。このことは講義でも是非話しておきたいと思う。こうした事件の現場の話を伝えることが実務家の役割であると思っている。こう思っていただける事件を担当できるときは弁護士冥利につきる。

こうした分野で法的に争ったことが一度だけある。墓地を購入したがこの墓地を購入するとその指定する石材店で墓石を購入することが条件付けられ,その墓石は一般的価格からすると高額に設定されていると思われる事案があった。こうしたことは今でもよくある事案だと思われる。抱き合わせ販売に該当し,不公正な取引方法で独禁法違反だと争ったのであるが,未だ消費者の選択の自由は侵害されてなく,競争を阻害しているともいえないとう裁判所の判断であった。学者の協力も得て準備をしていただけに高裁でも争いたかったが,依頼者の意向で争わずに終了した。それでもこうして争った事例は珍しかったのかしばらくの間,ときどき公正取引委員会やら学者の方々から問い合わせが続いていた。

こんなことを思い出しているうちに,大学院生に伝えたいことが自分なりにまとまってきたように思う。

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