腹をたてるばかりではだめなのだが

2007年6月1日

松岡農水相の自殺で,政治と金の問題,年金問題に一挙に決着をつけようとする強引な国会運営が続いている。それらの周辺に起きている問題を聞いているとっても嫌な気分になる。年金支払い不明者に関しては「政争にしないでいただきたい」とその本質について何も論議されないまま一日の審議で法案を成立させようとしている。小学校の時に習った民主主義てなんだろうかと思える。こんな出来事に腹を立てているだけでは何も変わらない。そこそこにみながらきちんと投票で国民の審判を下さなければならない。

さて,今朝は朝一番に来週初回期日のはいっている業務上過失致死事件について検察官提出予定記録を閲覧に倉敷にでかけた。起訴状を見て,被告人とも既に何度か事前の打ち合わせをしていたので厳しい事案でるとは想像していたが,記録を読んで唖然とする内容も明らかになった。この事件は,1歳の孫を抱いて散歩していた老人(私とそんなに年は違わないので老人と呼ぶのは抵抗がある)を夕日の輝きで目をそらして進行した被告人運転の車両がはねて二人とも死亡させたという事案である。被告人には若いころ暴走族のようなことをしていた時期があったようだ。そのせいか被害者の関係者の供述調書には,近所では危険運転をする人で有名であったなどという記述があった。悲惨な事故であるということは争いようがない事実であり,被害者側の怒りも理解できる。しかし,ひとたび事件になれば被告人の遠い過去のことがすべて明らかにされ,それが非難の対象となってくる。そしてすべてが悪い方向に解釈されていく。任意保険も仕事の関係でいつもお願いしている保険代理店にすべての書類を整えて手続きをし,本人は手続きが完了していると思っていたが,手続きは未了であった。こうしたことも強い非難の対象となっている。おそらく法廷でも被害者の関係者は傍聴し,厳しい視線をなげかけ,最後には厳罰にして欲しいとの意見陳述があるだろう。かなり実刑くさい事件である。

今,業務上過失致死事件で1審実刑の控訴事件を1件担当している。飲酒して,暴走のうえの死亡事故であった。どんなに責められても仕方のない,また本人もそう考えている事案である。しかし,本人はその事故いらい1滴の酒を口にすることはない。車が好きであったが,今後は絶対に車に乗ることはないと言い切っている。若い夫婦であるが,もう少しすれば第2子誕生となる。この事件も被害者は絶対に許すことはできないと1審では意見陳述した。被告人の家庭で正月に飾りがでていたことをも法廷で責められた。この事件も実刑になる危険はかなりの確率であるだろう。

死という結果が生じれば,それに等しい刑罰が科されるべきであると考える被害者の感情は理解できても刑罰システムとしてそうした意見をそのまま反映しようとする今の刑事裁判のあり方には疑問を感じる。文化国家の刑罰は,被告人の社会復帰,更正を実現することが目的とならなければならない。何かしら今は,死刑が乱発される野蛮国家なのではないか。他国の紛争に積極的に武力で関与していこうとする今の国の方向と相通じるものを感じるが,,,,。

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