「ドレスデン,運命の日」

2007年7月17日

映画「ドレスデン,運命の日」を観た。2時間20分のなかなかの大作であった。運命の日とは,1945年2月13日のドレスデン爆撃の日のことである。爆撃の続く中,物語が大きく進行していくので,この爆撃の画面が長く続く。最初の攻撃で爆撃目標の建築物に赤いマークをつけ,2度目にそのマークの地点を破壊し,そこに焼夷弾を撃ち込む。炎は火柱となって周辺の酸素を吸い込みながら燃え上がり,それによって強い風が巻き起こり,炎は嵐のように暴れ,避難している人は一酸化中毒で死んでいく。まさに地獄絵をみる光景であった。しかし,それは現実におきたことなのだ。戦争という無意味さ,どんなかたちであれ決して再び戦争をすべきではないことを強く感じさせられた作品であった。

ドレスデンには,昨年クリスマスの時期に行った。その時のフラウエン教会はその塔の上にたつ十字架まですべて完成されていた(この映画の撮影時にはこの十字架部分は未完成だったのではないかと思われた)。ユダヤ人虐殺の重い歴史を背負うドイツは,ドイツが被害者であるこのような作品はなかなかいままで作ることができなかったのではないだろうか。今回の映画のなかでもユダヤ人問題がでてくる。攻撃を受ける前のドレスデンは,文化的にも経済的にも栄華を極めていた都市であったと思われるが,現在のドレスデンはまだまだ空爆の痕跡を残し,広場のようになって利用されていない土地がかなり目立っていた。実写フィルムと合成されていて,戦前のドレスデンの様子もそのままでてくる。フラウエン教会前の庭に新しいマルチンルターの像があったが,戦前にも確かに同じ位置に写っていた。何よりも感じたのは,この街が加害者,被害者とが一体となって,平和の象徴として復興したことである。そのことを訴えたかった作品であると思うが,この作品はラブ・ロマンス物語でもあり,若い人たちにも気軽に観てもらって平和について考えるきっかけとなればと思う。

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