裁判員裁判への準備

2007年8月9日

今日の山陽新聞夕刊「一日一題」は岡山地裁所長が「なぜ?裁判員制度」と題して書かれていた。所長は私とは研修所同期の裁判官である。年齢も今年還暦を迎える同世代である。書かれた論調はそのとおりであり,何も批判すべき点はない。しかし,やはり肝心なところが抜けている。「裁判員制度は,刑事裁判に法律の専門家でない一般市民が加わることにより,刑事裁判が一般市民に身近で分かりやすく,その視点や感覚が反映されたものとなることが期待され,導入されたもの」であることはそのとおりである。でも今までのキャリア裁判官だけの裁判で誤判が相次いでおき,死刑確定判決に対して再審無罪となるようなことがあったことの反省のもとで検討された制度であるという,現在の制度の欠陥について触れられていないことが問題であろう。

今日の日弁連での会議では,裁判員制度への準備に向けてどの程度進んでいるか,これまでの準備状況で問題となっていることは何かなどについて現状の報告を関連委員会から受けて質疑がなされた。裁判員制度に関しては検察庁,裁判所と比べて弁護士側の準備が遅れているのではないかなどという意見があること,裁判所側は裁判員制度に関する規則制定の論議のなかで,この制度ができうる限り陪審に近い運営がなされることを考えている弁護士会に対して強く裁判所側は抵抗している状況などが報告された。裁判員に対して裁判の始まりに裁判所からなされる、被告人の「無罪推定の原則」の説示例の内容もほぼまとまったようであるが、いつの時期にどの程度なされるべきかについては裁判官の判断にまかされることになりそうである。これらの報告を受けて次回には問題点の整理が行われる。平成21年からは待ったなしに始まる手続きである。新しい制度が根付くためには最初が肝心である。もっと積極的な裁判員制度実施に向けての準備活動が組織的になされるべきであるという意見もでていた。一部の弁護士の取り組み終わらせないで,多くの市民の方々の強い関心を呼び起こす積極的な取り組みが我々弁護士に求められているのだろう。

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