情報提供義務

2006年11月11日

岡山弁護士会内部の私的勉強会で秋田で開催された全国先物取引被害研究会の報告をした。私は、その時の記念講演の内容について報告した。複雑でリスクのある金融商品の販売するにあたって、情報提供義務、説明義務、助言義務、適合性原則、不紹請勧誘の制限などを民法理論から基礎づけてみるという内容の講演であった。つまり、契約をするときは業者は顧客に対し充分にその商品に対する情報を提供し、その情報に基づいて説明をし、契約の内容に従ってきちんと助言して契約を継続していく義務があるということである。そして頼みもしないのに勝手に電話での勧誘、訪問をすることを制限し、勧めるときはその人に適合したふさわしい商品を提供しなければならないというものである。専門業者と素人の消費者との間の契約として一般的に考えれば当然のことであるが、これを法的に認めさせることは結構大変なことなのである。証券取引法の改正となった金融商品取引法では適合性原則や不招請勧誘の制限が規定されている。消費者という弱者に業者と対等な立場を与えるものであって、契約自由の原則を実質的に保障することになる。一人一人の個人を大切にする民主主義の契約社会の基盤をつくる考え方である。rnrn情報提供義務といえば、今日のニュースでNHKに総務省が放送命令をだしたことが伝えられている。このニュースをめぐってあまり大きな報道とはなっていないし、国会でも大きく取り上げられようとしていないように思われる。NHKに関しては従軍慰安婦問題で政府の干渉があったのではないかとの報道がなされたこともある。予算は国会でも承認をうけなければならないことから、政府与党に弱いところが体質的にある。しかし、報道が時の政府によって一定の方向にゆがめられることがあってはならない。今回の放送命令は具体的な放送内容に関することであり、このようなことがなされることは民主主義の基本を揺るがしかねない問題である。われわれ国民は、的確な情報に接し、その情報に基づいて考えて意思決定をし、選挙などを通じて国家の意思形成に関与するのである。その情報そのものが時の政府によってコントロールされていれば国民の自由な意思決定そのものが阻害され、時の権力者のいうがままとなってしまう。この民主主義の基本を守るために憲法で知る権利が保障され、この知る権利を実質的に保障するために報道の自由が憲法上の権利としてあると解釈され、その報道の自由を守るためにマスコミの取材源の秘匿の権利があるとされている。そうした観点から最高裁もあらためて取材源の秘密を守る権利があることを確認する判決を最近だしている。今回の総務省の対応は真剣に報道機関に対する干渉がどのような意味を持つのか考えたうえでのことであったのだろうか。考えたうえでのことであるとすれば「大本営発表」への一歩である。

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