大学を卒業した翌年に司法試験に合格したので,普通の会社に就職して働くと言う経験はなかった。司法試験に合格して,2年間の司法修習生としての生活となる。この間の身分は最高裁判所に所属し,給与が支給される。つまり国家公務員ということであった。よくは認識していなかったが,この2年間の間に共済年金の掛け金をかけていたことになる。従ってこの間の支払いに関して年金が支払われるのである。もう35年以上も前のことである。そんな掛け金を支払っていて,60歳になればいくらか毎月支給されることになるなど全く頭になかった。
今までは,この受給資格が発生しても誰もそのことを教えてくれる人はいなかった。多くの私と同じような経歴の持ち主はそのことに気づかされないまま受給しないでいた。共済組合にはかなりの利得が生じていたことになる。しかし,ここのところ年金問題が政治問題化し,このことが政局となるまでになっている。そんなことを反映してか,今年は日弁連が全会員に受給資格があるかないかのチェックを促す通知をだした。そして,最高裁にその申し出をするようにその申請の書式などの案内もあった。
私は,今年で60歳になり,その受給資格が発生した。この制度があることを知っていた友人は,早速この受給手続きをとるように教えてくれた。そこに日弁連からの通知であり,申請手続きをする準備を始めた。私の場合,国民年金の掛け金の支払期間に関する証明書が必要とのことであり,早速社会保険事務所に連絡をした。とても丁寧な応対であった。しかし,窓口は大変なにぎわいで手続きにはかなりの時間待たなければならないようであった。急がないので郵送で手続きをすることになった。受給手続きも結構面倒である。この手続きを終了すると月々4000円足らずの金額が支給されるようになるようである。多いのか少ないのか判断できない。わずか2年間の成果である。裁判官になって数十年勤め上げた人はたくさんもらえるのだろうと人のことをうらやんでいる。
一人前になるための2年間の研修期間に給与をいただいたことは,何のために法曹となり,誰のために働くのかを考えさえられることであった。弁護士となるにしても国家の司法を支える一員であるという自覚をもたらせた。しかし,もうこの司法修習生に給与を支払うという制度は廃止となる。経済的余裕のある人だけが法科大学院にいき,司法試験に合格して研修所にはいって法曹となるというシステムになっていく。司法修習生の大量落第もニュースで流れていた。鳩山法務大臣は,司法試験3000人合格は多すぎると発言していた。この点は同感である。