ワイズメンズクラブの例会に出席の途中で車のラジオで阪神巨人戦を聴いていた。1回の裏で既に1点を追う立場であった。しかし,ノーアウト1塁の状況となっていて駐車場にはいってもなかなか車から降りられない。1点返して同点となってまだ攻撃中のところで車から降りた。例会が終わり帰りの車に乗ったところまだ7回で1点のリードのようだ。そのまま車で帰宅を急いだ。なんとなく今日も阪神が勝ちそうな勢いである。ラジオからも応援の音声が球場を覆っている様子と緊張感が伝わってくる。そんな興奮を覚えながら中学校時代に習った「硬度」という言葉が頭に浮かんだ。
硬度は物と物を擦りあわせてみて傷が付いた方が柔らかい。こうして比較していくとダイヤモンドがいちばん硬い。ダイヤの刃でダイヤよりやわらかいガラスを切ったりする。では,ダイヤはどうやって切ることができるのだろうか。当時もそんな疑問をもった。ダイヤはダイヤで磨いたり加工するとそのとき聞いた。この硬度は常にそういう順序であり,変わることはない。ガラスでダイヤを切ることは絶対にできない。ところが人がからむスポーツでは,相対的な力の差が常に結果で表現されることにはならない。何かそこに働く力が別にある。人の集中力,試合を支配しようとする意欲,応援の全体から醸し出される力などチームの客観的な力だけでは結果は決まらない。戦力的的には巨人の方が阪神より勝っているだろう。しかし,試合では常に巨人が勝つことにはならない。現に巨人は2位である。いろんな要素が加味され,試合が動き,勝負が決まる。だからスポーツのゲームを見るのは楽しい。
自宅に着くとまだ8回にはいったばかりであった。1点のリードは同点にされていた。そして9回は藤川,3塁側に体をむけ,いったんバッターをみつめ頭を再び正面にもどし,フッと息をはく,1塁走者に目をやり後ろ頭に手をやり帽子をととのえ投球にはいる。厳しい投球が続くが最後は3振でゲームセット。強い者が必ず勝つとは限らない,ガラスがダイヤを傷つけることもある,人がからむゲームのおもしろさである。しかし,何事もあきらめることなく執念を燃やして集中して全力を尽くすときはすごい力を持つものである。硬度では計れない何かがあると思うのである。