保釈請求却下その後2

2006年11月3日

午後6時前、裁判所も5時を過ぎたこの時間でも仕事をしているようであるが、広島高等裁判所岡山支部から地裁の保釈却下の決定を取り消し、保釈を認めるとの決定がでたことの連絡をもらった。当然の決定といえば当然だ。全ての審理が終了してさえ証拠隠滅の虞ありと地裁は判断していたのだ。裁判所にでも潜り込んで証拠を盗むとでも考えたのだろうか。高裁は、当然の判断をしたに過ぎない。裁判当初から被告人の調書も含めてほとんど全ての書証には同意していて、同意していなかった証人の調べが終った段階で保釈が認められて当然だと思っていた。否認をすることは身柄を拘束されて裁判を受けなければならないことであるということを覚悟しなければならない。時としてこれが誤審につながるのである。とはいえ、保釈金額については破格の考慮を頂いた。おそらく数日中には準備できるであろう。まだ、被告人はこの事態を知らせていない。2年半ぶりに自宅に戻って、果たして落ち着ける環境があるかどうか、それが心配である。rnrn午後からの県北の地裁支部での尋問のために10時30分頃には事務所をでた。先物取引被害の事件であった。退職者に絶対儲かるからと取引を始めさせ、わずか1週間の間に1000万円以上の損害を与えたというものである。裁判官が勧誘員に「私にわかるように先物取引は少ない証拠金で多額の取引が可能か説明して下さい。ここできちんと説明できないようでは原告に対してきちんと説明したとは信じがたい」と質問したが、裁判官に理解できるようには説明できなかった。こんな理屈はさらっと聞いてすぐ理解出きる人はそうはいない。私もこの種の事件を取り扱うようになった当初は、どうして買いもしないのに売ることができるのかということの説明を、一応してみても感覚的に納得できるまでには相当の時間がかかった。従って、業者は普通の人には売建(うりだて)からはいることをまず勧めることはない。たいてい「今ガソリンが上がっています!今買えば絶対儲かります」というような勧誘から始まるのである。しかし、裁判官は本件の事例について業者に違法がいろいろとあることは認識しているようであるが、ひっかかるあなたが悪いということも強調したそうな質問が原告に次々となされた。あるいは欲にかられたからではないかと責めてくる。もともとこうした取引には勧誘する側と勧誘される側とに情報量、専門知識などに大きな格差がある。法律もそのことを前提に委託者保護の規定を設けている。この法に違反して勧誘し取引をして利益をあげた業者であるにもかかわらず、ひっかかった原告が悪いと言われてしまうのも悔しい。騙される者に落ち度があってもその弱点をついて騙す側の方がもっと悪いとはっきりと消費者保護の思想を明確にされた竹内教授の論文をこの裁判官にも読んでもらいたいと思った。そこで思い出したが、来年も岡大法科大学院で消費者法の講座を担当することになった。未来の法曹に対して、消費者法の伝道者の役割を少しでも果たすことができればと決意を新たにし、来年の講座を楽しみたいと思っている。

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