浜松での人権大会であった。昨日は午後12時30分から午後6時まで人権大会に関する3つのシンポジュームが同時進行であり、2つのシンポジュームに前半と後半に分けて参加した。そして今日は大会であった。今日は第50回の記念大会として大江健三郎さんの講演が組み込まれていた。大江さんの演題は「原理としての人間らしさ」であった。
大江さんは春と秋のそれぞれ1回だけ講演を引き受けられているとのことである。そして、今回の講演はてっきり来年の秋の講演だと思いこんでいたそうだ。しかも、偶然に今年の秋の講演は既に浜松で済ませていて、今回の講演日程に数日前に気づかされたというから本当に大変だったのだと思う。今の混迷した世界に16世紀に興った「人間復興」が唱えられたあのルネッサンスを再び現代に「人間らしさ」の復興として考え直すことに光をみいだせるのではないかと訴えられたと理解した。決して楽観しすぎてもいけない、そして決して悲観しすぎてもいけない、その調和のなかで現代の矛盾を解決すべく考える必要のあることを訴えられたと思う。テロと戦うと言いながら多くの市民が殺害されていくこの矛盾に対する解決をこうした思考の中に見いだそうとしていたのだ。自ら、沖縄ノートの記載について裁判を抱えながらの信念を持った講演であった。大江さんの作品はいくつか読んでいて、良く知っている人であるいう錯覚にとらわれるが、実は「生」大江さんに会うのはちょうど40年ぶりになる。1967年5月3日、 文京公会堂での講演を聴いて以来である。感慨を持ちながら50分の講演に聴き入っていた。
夕方は文藝春秋の方のアレンジで、東京で「家栽の人」の作画・漫画家、魚戸おさむさんとご一緒に食事をする機会があった。最近の子供たちのこと、食の安全が脅かされていること、「家栽の人」の苦労談など話はどんどん広がっていった。魚戸さんの「家栽の人」の取材段階で、私も面識があり妻の父親の友人でもあった裁判官に取材していたことも判明し、意外な関係があったことも知らされることとなった。漫画の世界で自分の訴えたいことをしっかりと実現している姿勢に共感することができた。楽しい2時間をあっという間に過ごしてしまった。