依頼者がすべて正しいと思っている訳ではない

2007年11月7日

事件の依頼を受け,訴訟を担当することになってもその依頼者が絶対正しいと思って事件を処理するばかりではない。あやしいと,あるいは別の見方ができるとか,相手方の主張が正しいのではないかと思えるときがある。最近処理をしている事件のなかでいくつかそうした種類の事件がある。こうした場合の事件の処理の過程において,処理方針で悩んでしまうことがある。

相手方の主張が正しくみえたり,当方の主張が不自然で虚偽があるのではないかと思えたりする場合は率直にそのことを依頼者に伝える。そこが弱点であることについては間違いなく,その場合どのように処理していくかは互いに事前に納得しておかなければならないからだ。そのうで,今後の進行の予定をたて,起こりうる事態を予測し,その場合の処理方針に納得していいただければ事件として受任することになる。

事件を処理している途中で依頼者に虚偽があるのではないかの疑いを生じた場合も同様である。嘘をあくまでも嘘として済ませることは弁護士としては支持することはない。いろんな証拠資料があり,その中に当方に不利益な証拠がある場合,あえてそれを提出するということはしない。証拠は当方の主張を補充することができるものに限って提出することが原則である。しかし,その提出しなかった証拠について相手方から指摘を受けた場合,文書の存否について求釈明があった場合には正直にその存在について答える。沈黙は許されるがあえて虚偽のことを言うことは許されない。
刑事事件のときは黙秘権,適正手続きの保障などの観点からまた違った対応をすることになる。

考えてみれば当然の処理方法だと思われるが,依頼者が真実を語っているか否かについて疑いを持ったときにその処理については悩むことが多い。そうした事件を続けざま2件ほど経験していて,相手方の失礼な訴訟遂行についても腹が立ちながらもこちらから強い姿勢にでられない。どこまで資料を提出し,どこまで依頼者の主張信じて訴訟ができるのか現実にはそう簡単に処理方針を決断することができないのである。

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