司法修習生の交互尋問

2007年12月8日

司法修習生が,修習の一環として,学んだ尋問技術の成果を競う模擬裁判が実際の法廷を使用して行われた。原告,被告,裁判官のそれぞれのチームに分かれ,1日かけて尋問を終えて判決にいたるという日程である。12月12日からこの班の弁護修習を担当するので,この行事には参加するつもりで予定していた。しかし,ばたばたと雑務がはいってきて,結局20分だけしか見ることができなかった。

判決が出た後に,参加修習生,修習担当した裁判官(地裁所長自ら熱心に指導していた),弁護士らが参加しての講評会がなされた。20分しか見ていない私にとっては何も講評すべきことはない。また,私が,裁判所に出かけて尋問するのを裁判所では裁判官の立場で見ている修習生にえらそうに講評できるほど優れた尋問技術を有しているとも思えない。しかし,20分ほどしか見ていなかったが,もっとてきぱきと相手方の尋問に対して異議をいうべきではないかとは感じた。尋問するときは,いつまでたっても結構気をつかい,なかなか自分で満足できる尋問ができたことはない。そして,尋問方法について特に研究することもしていないので,経験則的に考え,勘に頼ってしまっていることも多く,尋問技術に進歩がみられたとも思えない。だから,修習生に見られていること自体恥ずかしく感じるのである。すこし,図々しくなり,異議がでることを見越して質問をし,またその異議に対して異議に理由がないという理由もあらかじめ考えて尋問する時がある。だから,きちんと異議のある時は根拠をもって速やかに異議をだして,裁判官に誤導的な心証を持たしてはならない。

司法修習生として裁判を裁判官の立場で見ていたとき,ほとんどの事件においては異議を出すことはなく平穏に進行していたが,てきぱきと異議をだし,しかもその異議に対して適切な理由を述べ,相手方の尋問を牽制してた弁護士がいた。裁判を傍聴していて,なぜ異議をだしたかすぐには理解できないでいたところ,なるほどと思わされる理由を即座にわかりやすく説明するように述べ,相手方の尋問を変えさせていた。その時,あの弁護士は誰だろうかと思って岡山弁護士会に入会したが,その弁護士は既に練達の域に達していた寺田熊雄弁護士であった。この方は,後に参議院議員となられて活躍された方であった。刑事事件においては、豊田秀男弁護士がその尋問、弁論には定評があった。刑事裁判を長く担当していた岳父は、豊田弁護士の法廷を楽しみにしていた。私が,司法修習生の時にみた寺田弁護士のように司法修習生になんらかのインパクトを与えることができればいいが,尋問技術については今も誇れるまでにとうてい至っていない。交互尋問は本当に難しいものであると思うが,今日の模擬裁判を見ながら,丁寧に1回1回の尋問について反省をしながら技術を磨くという意識を持ち続けなければならないと自戒した次第である。

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