住宅の賃貸契約終了後,家主から通常の使用方法とは思えない傷みがあるとして損害賠償請求を受けていた事案についてきょう,広島高等裁判所岡山支部で和解が成立した。通常の使用方法か否かについては実は私も現地に行ってみていない。原審でも写真でしか説明していない。原審では当方の主張がほぼ全面的に認められていたので,それでも良かった。高裁では,審理が始まるや否や,裁判官から「10パーセントの責任しか認めなかった1審の判決はおかしい。責任があるとすればもっと高い比率の責任である」として当方にとってはかなり厳しいと思われる和解を提示してきた。もっとも相手方も一歩も引かない態度であった。しかし,40パーセント程度の責任で本日和解をした。一応の納得はしたものの,写真だけで,通常の使用方法によるものか否かを判断してしまうのだから異常ではあると思う。今回は,いろいろと事情があり当方が早期の解決を望んだから納得したものの,裁判所が一度も現地をみないで判断したことには釈然としない気持ちが残る。裁判所は,現地に行くことをとてもいやがる。検証などはほとんどやりたがらない。効率を重視する最近の裁判所は,現地に行く時間がもったいないと考えているのだろうか。そんな裁判所の傾向を考え,代理人としてもどうせ現地にいくことはないだろうと検証の申請を控えたりしているようにも見える。とにもかくにも,紛争が1件落着した。夕方は別の高裁事件について,次回までに提出予定の資料作成の打ち合わせをした。この事件も裁判所は,今までの訴訟指揮から考えると,当方の尋問の申請を却下する予定であることが目に見えている。これは,控訴事件である。こんな場合もできるだけ尋問はしないようにというのが裁判所の方針だ。これが裁判の迅速の要請だとすればどこかおかしい。
こうして1件の事件が終了した。もう一件交渉案件に関して示談ができた。事務所の電話機器を高額で購入さされたある公益団体が,この販売方法に問題があるとして,支払ったリース料全額の返還を求めていた事案である。これは,交渉の難航が予想されていたが,全額の返金を確保することができた。しかし,新たな事件を受任することにもなった。ある社会福祉団体とそれを支援する団体との関係悪化のなかにおきた問題の処理である。これは解決までには紆余曲折がありそうである。おこりうべき問題とこれへの最低限の対応策を検討してこれからも継続的に相談に乗っていくこととなった。こうして,弁護士の仕事は,1件終わればまた新たな相談が始まり,いつまでも終わりのない仕事なのだ。1度でいいから,すべての仕事をリセットできる転勤でもあればなと裁判官の立場をうらやましく思ったりすることがある。