なつかしい「海外先物取引」被害と青い炎

2008年1月18日

今日,依頼を受けていた講演は,中四国農政局管内の消費者相談センターの方々を対象に商品先物取引被害の実情等について話すことであった。説明側は農水省から担当部局,業者側から日本商品先物取引協会などからの出席があり,その中での講演であった。先物取引の被害救済事件を扱うようになってもう25年ぐらい経過している。この業界のほんとうに腐った実情をみるにつけ,いつまでこの業界に一般委託者を引きずり込み続けるのか怒りの気持ちがわいてくる。業界関係者,この業界の振興に責任あるお役所の方々の前で,この本音をはっきりとだしていいのかなどと思ってみたりもしたが,むしろ被害の実態を主務省の人々に正視してもらう意味でも実情と問題点ははっきりと言うべきだと考え,礼を失しない程度に(言葉遣いに注意しながら)被害の実態をそのまま話した。

今日のこの説明会のメインは,「海外商品先物取引」被害に注意をしようということのようであり,お役所からの説明はそこに重点がおかれていた。その啓蒙のポスターも準備されていた。私にとって「海外商品先物取引」というのは本当に懐かしさを覚える言葉である。昭和56年頃,海外商品先物取引被害が多発した。当時の私は先物取引の仕組み自体についてまだ知識がなかった。その仕組みを理解するまでにはかなりの時間を要した。この種の事件を扱う始まりとなった事件であった。その被害の深刻さに昭和57年にこれを規制する法律ができた。その法の業者に対する説明会で通産省の担当者は「あなた方は腐った盲腸である。」と言い切り,経済的にも有害でこそあれ,なんらの利益をもたらさないこの業界はつぶれればいいという態度であった。全国的に刑事事件に発展した例もあり,岡山でも逮捕者がでた。それから海外商品先物取引はほとんど目にすることはなくなっていた。ところが,ここにきて,海外商品先物取引の被害相談に再び出くわすようになった。いったん消滅したかに見えていたこの「腐った盲腸」がまた息を吹き返したのである。

国内公設先物取引は,やはり一般投資家の資金を無理矢理投入させようとする業者の手数料稼ぎの場となってきた。手口そのものは海外先物とさして違わない実態があったのである。そうした実態を是正させるべく農水省は,市場に対していろいろと規制を強化してきた。その背景には,司法の場で多くの業者側の違法行為類型を明らかにする判決の積み重ねが存在したからだ。その規制に耐えかねた悪徳外務員らが,それまでのノウハウを生かして,規制の緩い海外先物に活動分野を移してきているといえる。まさに動機において不純なのである。こんな取引に手を出してはならない。ほぼ確実に詐欺と言えるような手法であることは明らかである。

国内公設先物取引被害の実情については国会でも議論されてきていて,このまま被害申告が減らないようであれば「不招請勧誘の禁止」条項を入れるべきであるとの付帯決議までなされた実情がある。

この講演が終わり,ほっとしている。仕事始め以来,連日宿題を抱えてその日その日をなんとかクリアしてきた。あすはそこまでせっぱ詰まった事件はない。きょうはその意味でもほっとしている。しかしである,,,。ほっとしたところで30年近く働き続けてきていた事務所のエアコンが静かに運転を休止してしまった。引っ越しまであと1ヶ月である。新しいものを確保することもできず,結婚当時から使っていたアラジンの石油ストーブを出してきた。芯を換えて点火してみると青い暖かい火を放った。これもとても懐かしい光景であった。

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