裁判員制度の導入,法曹人口の大幅な増員,弁護士任官,地家裁委員会の設置などかつてどうしても実現することのできなかった司法改革が熱気のなかで劇的な変革を遂げ,その立法化を終えた。今はその実施の時である。裁判員制度も来年の5月には現実に始まることとなる。
しかし,その理念がもう人々の口から語られることが少なくなろうとし,いやこれらの動きに逆行するような言動がみられるようになっている。今日は,地家裁委員会の勉強会があった。地方裁判所,家庭裁判所の運営に民間人が参加する委員会を通じてその意見を反映させようという新しい制度がこの司法改革のなかで生まれた。しかし,裁判所自体はこの委員会を実質的に動き出すことをいやがっている。運営が形骸化しているのである。きょうは,この委員会をどのようにして活発化させるか民間から選任されている委員の方々を招いて勉強会を行ったのである。しかし,この委員会が形骸化した活動しかできないのであれば,意味がなく,活動を止めてしまえばいいなどという意見がでてきたりして,あの司法改革の熱はどうしたのかと思わされた。社会の隅々まで「法の支配」をゆきわたらすということが実現しないまま,弁護士の就職難であるとして,直ちに法曹人口を減らせという意見が会長選挙の争点にまでになっている。大きな政策決定のなかで,国家の制度としてできたものを、国民的な議論とそうした政策変更なしに、現実的な制度変更は不可能である。司法改革の理念を,今一度,司法関係者は思い起こしながら,司法改革の理念に沿った改革の実施をしていかなければならない。
今日の勉強会には大阪からこれらの問題に情熱的に関わってきていた弁護士に参加して頂いて,大阪家庭裁判所委員会の実情と問題点を話してもらった。この勉強会のあとのアルコールのはいった懇親会では,世界最大の弁護士会館ではないかといわれている新大阪弁護士会館建築の苦労話なども聞くことができ,とても楽しい時間を過ごした。