土曜日の事務所は静かである。電話の数も圧倒的に少ない。急ぎの打ち合わせと法律相談が午前中にはいった。法律相談者は65歳,無職の男性である。10数年前に私の事務所で負債整理をしたとのことであったが,その人を見ても記憶がない。サラ金5件から合計300万円程度の借り入れがあるとのことである。雇用促進住宅にひとりで住んでいるとのことであるから,資産はない。取引の経過を聞こうにも何の書類も持っていない。無職となったのは仕事中に怪我をしたからだとか。この年齢に,身体の障害を抱えていてはもう働けないであろう。破産宣告を前提で債務調査などの手続きを受任した。現段階ではあまり詳しい話は聞かなかった。メモ用紙のような紙切れに,借り入れた5社のサラ金の名前と金額がカタカナと数字での記載である。そこから垣間見えてくることを,今はそれ以上聞き取らなくても私の仕事は始められる。その人の今までの人生と,これからの老後の生活を考えると暗い気持ちになる。
午後からは倉敷にでかけた。夕方から高校同窓の若き代議士の後援会が予定されていたからだ。その後援会の役員を引き受けていて,選挙区以外からではあるがでかけた。少し早めに倉敷にでかけ,大原美術館に寄った。ムンク展の企画があると思ったからだ。昨年上野の国立西洋美術館でムンク展をみてきていたので,もう一度ムンクの絵に出会えると思ってでかけた。ムンクの生,死,愛をテーマにしていた姿勢はこの企画展でも十分に伝わった。しかし,あのムンク展をみたあとの今回の企画は非常にこじんまりとしたものと感じてしまった。
同窓生の集まりは,同じ空間を時代を超えて共有している一体感から,互いの警戒感を取り去り,ざっくばらんに話ができることが嬉しい。母校では2人の同級生が教鞭をとっている。