現在,国選刑事事件を1件抱えている。司法修習生用にと受任したものだ。国選刑事事件は,年に数件担当している。そして,きょうは逮捕されて勾留されている被疑者が,かつて私に負債整理事件を依頼したことがあったようで,今回の刑事事件を是非受任して欲しいと留置場から依頼してきたので,とりあえず接見をしてきた。とても経済的事情で私選の弁護人を依頼する経済的力はないようであったので,国選を依頼するようにアドバイスをした。しかし,できれば,この事件を国選の弁護人として私がやってあげられるよう手配してみることにした。もう1件,国選事件が増えることになるかもしれない。
国選事件の受任は,弁護士の義務と意識されてきた。支払われる報酬の低さからボランティア要素の強いものと考えられて,これを進んでやろうという人が少なかったからである。しかし,基本的人権の擁護と社会正義の実現を職務として業務を独占している以上,これらの業務をやることは,誇りであり,義務でもあると思われてきたのである。しかし,最近はごく少数ではあるが,国選業務を中心的にな業務としている弁護士が現れてきた。そのせいか,国選事件が引き受け手がいなくて滞留することはなくなった。このことは,評価できる面がある一方,多くの会員が弁護士の仕事の中核的なものといえる刑事事件から遠ざかってしまいかねない危険をはらんでいる。
昨日は,こうした問題について「21年問題への対応」と題して,弁護士会内で本音の議論がなされた。「21年問題」とは,今は国選弁護人は刑事被告人だけについているが(正確には一部の重大犯罪に関しては被疑者段階から),平成21年には身柄拘束の全員について国選弁護人がつくことになり,国選事件が一挙に増加することが必至であって,これへの対応をどうするかについて論議がなされたのである。この急激な件数の増加に対して,国選受任の義務化をはかることの是非,その対応の方法について率直な意見交換があった。しかし,ここでの議論で若い会員からも国選事件を義務化すべきか否か議論があるが,少なくとも義務と考えてみんなでやていく気構えが必要だとの意見がだされ,我々の世代と違和感のない議論ができたことに安心感があった。「弁護士」の魂は変わっていないと思ったからである。