事務所移転

2008年1月29日

来週の週末に事務所の引っ越しの予定である。このビルには,部屋は変わったりしたが,かれこれ30年いる。独立した当初からの事務所である。学生時代にも4年間一度も変わることはことはなかった。引っ越しが苦手なのである。事務員の方が手際よく,引っ越しに備えて準備が進んでいる。私のすべきことはたくさんあるはずであるがなにも進んでいない。憂鬱な日々を過ごすことになる。

きょうは,大家のところに挨拶にでかけた。いつもこの大家さんの強引なやりかたに不満が募っていたところではあるが,きょうは,感慨深げに,長いことありがとうございましたとのご挨拶をいただいた。そして私が入居した当時の昔話に話が及び,互いに年をとったとの結論に落ち着いた。この大家さんとこんな話ができるとは思っていなかった。私の方からお礼を言わなければならなかった。

昨年,還暦を迎えた私にとって,新しい事務所への移転など積極的には考えていなかった。むしろどのようにして事務所を閉めるのかといいうことを考えておかなければと思っていたほどだ。しかし,根本的にこの考えが変わったのは,弁護士会の現状を考えてのことである。今,弁護士は就職難と言われるほど急激に人数が増えている。様々なタイプの弁護士像が生まれている。長男もそうであるが,法廷に立つことのない弁護士もいる。そんな多様な弁護士像のなかでコアの部分で共有できる「弁護士魂  」がなければならない。しかし,今の司法修習はこうしたことを学ぶ時間が削減され,修習は基本的に検察庁,裁判所,弁護士会の仕事をしていくうえで訓練されればいいという考えである。こうしたことが現実にあるかぎり,弁護士会の先輩は,コアの部分で共有できる後輩を育てていかなければならない義務があると考えさせられた。その意味で,もう少し若い弁護士を受容できるスペースをもった事務所を確保しておきたいと思ったからである。司法修習生を受け入れるのは後輩を育てる義務であると考えてきたが,今度は弁護士を育てることも義務と考えるべきだと思わされたのである。

大家からは「新しい事務所でもう一勝負ですか」などと言われた。そんなことではない。法曹人口が急増している中,何からも影響を受けないで独立して職務を執行することのでき弁護士魂をもった若い弁護士を一人でも育てていきたいと密かに考えているからである。

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