えん罪

2008年2月15日

鳩山法務大臣は,人違いなど明白に他に犯人がいたことが証明された事件は「えん罪」であるが,鹿児島の志布志事件などのように違法な取り調べの結果,犯罪が証明されなかったにすぎない事件は「えん罪」とは言わないと言う趣旨の発言をした。

これは,刑事裁判の原則を全く考えない乱暴で明らかに誤った考えであり,このような人が法の執行に責任のある法務大臣とはあきれるしかない。また,そのような考えの持ち主が国会議員であることに呆れる。刑事裁判においては「疑わしきは,被告人の利益に」の原則が貫かれなければならず,「適正な手続き」が保障され,有罪判決が確定されるまでは無罪と推定されるのである。普遍的な原則であり,憲法によって保障された権利なのである。この原則が崩れてしまえば,権力者の恣意による都合のいい判決がなされることになる。権力者のために一人の無辜の人を罰することがあってはならないのである。

この原則がしっかりと貫かれなければ裁判員裁判は暗黒のものとなってしまう。裁判員が従来の職業的裁判官の検察官が起訴したものは有罪に違いないとの誤った観念を,一般社会人の目で「疑わしい」と思える事実はないかどうか,「合理的な疑いを容れない程度に検察官は立証しているかどうか」との観点から批判的にみていくという態度がなければならない。このことが裁判員裁判の神髄なのである。しかし,法務大臣にしてあのような発言をしているようでは,裁判員制度の正確な意義について国民的な理解をえるのは困難なのではないか。来年5月までには裁判員制度は実施される。この刑事裁判の原則を徹底的に理解を求めていく作業こそ必要とされているのではないかと思う。

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