先物取引被害で高裁逆転の勝訴

2008年3月14日

私が担当していた事件ではない。大本弁護士の担当の事件である。県北のある企業の先代が,先物取引に勧誘されて取引を始めた。本業があまり順調でなかったことが,このような取引に手を染める動機を深めたかもしれない。高齢である。高齢者特有の頑固さが目立ってきていた。肝臓を痛めていて,症状はかなり進行し,正常な判断力を失っていたと思われる場面もしばしばあった。会社の国税の滞納額も相当に膨らんでいた。しかし,先物取引はその取引額が膨らんでいくばかりであった。こんな様子をみた長男が相談にきたのがこの事件を受任するきっかけとなった。家業は既に事実上倒産状態となっていた。この先物取引の被害額は億の単位であった。

こんな状況のなか先物取引会社を相手に損害賠償請求訴訟を提起した。1審判決は,取引に違法はないとして請求は棄却となった。そして,控訴審においてさらに大本弁護士の緻密な取引分析と主張の組み立てがなされ,家族の人生を狂わせた先物取引被害の実態を浮き彫りにしていった。そして,今日の控訴審判決であったが,見事逆転勝訴である。2億円を越える認容金額である。しかし,この判決言い渡しを国税庁の徴収担当者が傍聴にきていて,当方が勝訴したことを確認するや直ちに事務所に訪問してきて,これを差し押さえるというのである。まことに仕事熱心である。現実に入金になれば,これは国税としてもっていかれてしまう。結論はそれで異存はないが,大変な被害にあって,損害賠償請求でやっと勝訴してもこれは国税の徴収に協力しただけに終わってしまうのかと思うと釈然としない。しかし,高裁で逆転勝訴という嬉しい事件であった。先代はこの結果を見ないうちに亡くなっている。

当事務所にはもう1件同じような事件を抱えている。裁判上の和解で被害金額全額の支払いを受けた。これでやっと借金を支払えて,元の生活に戻れると思った矢先,一番に借金の支払いに充てたことを国税庁から非難され,これを元に戻して国税の支払いに充当させたのである。多額の借金はそのまま残っている。この件については,国税の課税処分自体を争っている。今日の事務所にきた国税徴収担当者は,この事件についても知っていて,気の毒ですねとは同情的ではあったが,こんなところでどうしても回収しようとする職務熱心さだけは良く理解できた。あとの件は是非とも国税庁の妥当な処分によって,是非とも元の普通の生活を取り戻してあげたいと思っている。

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