尋問技術

2008年3月18日

午前中は,国選事件に関係して被害者との示談交渉,父親がどうしても子供の親権を獲得したいという離婚事件の弁論手続きなどがあった。父親が親権を取得することは,ほんとうに難しい。少なくともそれを可能にする社会的条件がきびしい。父親の気持ちだけでは解決できない問題を抱えている。そのことを前提として,今後の子供たちとの関係を親がどう築いていけるのか,裁判の結果に頼らないで今一度考えてみることにし,裁判官を含めた関係者の協議で,きょう結審予定の事件を次回に持ち越した。

午後は,地労委の審問であった。もう弁護士となって35年目を向かえることになるが,いつまでたっても尋問がうまくいったと実感できることはない。いつも不完全燃焼で終わってしまう。毎回,きちんと反省して,どのようにすれば良かったかを積み重ねていけば,いまごろはすばらしい尋問技術をもった弁護士となっていたと思うが,そうはいかない。今日の尋問もそうであったが,相手方弁護士の反対尋問も失敗があったのではないかと思った。反対尋問は難しいものである。下手な反対尋問はしない方がいいとさえ言われている。今日の相手方の反対尋問は,まさに当方の言い足らなかったことを補充していただいたような内容が含まれていた。こうした尋問を「壁塗り尋問」というそうだ。私の方の反対尋問は,まずい尋問だったにも関わらず,証言者の性格がでたのかこちらの思うとおりの回答が返ってきた。結果的にそんなに失敗することのなかった尋問であったと自分では評価している。

尋問技術に触れたのは,夜に裁判員裁判に向けての尋問技術の研修があったからだ。司法関係者ではない裁判員に分かりやすく尋問を理解してもらうための尋問技術の研修である。しかし,この技術は,今の裁判でもそのまま当てはまる。日本ではこの尋問技術について特別な研修を受ける機会はいままではなかった。アメリカではこうしたことは徹底的にロースクールとか実務家に就いてからも所属する事務所の先輩などから教育を受ける機会がある。今日の研修は,その意味で新鮮であった。主尋問は,決して誘導しない尋問を,反対尋問は客観的な事実を前提に自己矛盾証言をアピールする方法をという原則は,いままで何となく体験的に覚えてきていた尋問方法について問題点を整理してもらったような気がした。何をどうアピールするか,裁判員裁判の弁護人は,いわば演出家としての能力も必要とされるようになる。裁判員裁判の事件も是非やってみたいと思う。

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