マスコミと刑事事件

2008年4月1日

夜10時近くではなかったろうか。自宅に某新聞社の記者が尋ねてきた。大本弁護士が担当しているある少年刑事事件に関して情報を取りたいということであった。私が担当している事件ではない。何も情報は持ち合わせていないし,もちろん当方からなんでもしゃべれるわけでもない。大本弁護士の連絡先を聞かれたが,もともと知らせるべきではない情報をとろうとしているのだから教えるわけにはいかない。丁重に,一切の情報提供はお断りした。

刑事事件であり,弁護人としての守秘義務もある。重大事件が起きたとき,よく駆けつけた弁護士に詳しくインタビューをしている光景に出くわす。しかし,これには原則として応じるべきではないと思っている。事実の解明は,訴訟手続きのなかで行われることになっている。弁護人がしゃべっても特別な評価が与えられるわけではない。被疑者,被告人にとっても何らの利益ももたらせない。むしろ,法廷外で弁護士が事件についてしゃべることは,百害あって一利なしと心得るべきである。少なくても私はそう思って仕事をしている。

豊田商事事件を扱っていたときは,緊迫した状況のなか,豊田商事の詐欺的な実態を早く解明しようとした。記者の人の取材と当方の事件処理をして得られた情報をいく上で入手した資料などを共同で検討し,内部組織,金の流れなどを具体的に調査した。そうした活動によってえられた情報で,豊田商法の詐欺会社の実態を明らかにしてきた。この時は,積極的に記者の方に接触し,情報提供をし,詐欺の実態を解明する資料とした。無罪推定が働く刑事事件との違いであろうか,マスコミとのつきあい方ともずいぶん違いがあつのだろうか。

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