三様の離婚事件

2008年4月9日

いずれも男性側からの依頼の離婚事件である。1件は,次回期日の準備のための連絡,1件は判決後の今後の対応,もう1件は結審を控えて異例の本人と裁判官との直接面談があった。

1番目のケースは,別居中で,子供を妻が引き取って育てているが夫の側がどうしても子供を手放したくないと訴訟で争っている。子供とは定期的に円滑に会うことができていて,子供たちもその日をいつも楽しみにしているようである。父親と子供たちとの関係は何も問題がないようにみられる。審理は最終段階に至っていて,調査官の調査がはいることになった。裁判官は,やはり無難な母親に親権者をと考えているのではないかと思わされる。子供たちと父親との関係は,今のうまくいっている関係が維持されればそれで良いのではないかということなのであろう。

2番目のケースは,別居中で子供を育てている妻との離婚訴訟で,判決で離婚は認められたが,親権者は母親と指定された。しかし,当方からだけの離婚訴訟であったので,共有財産の分割,養育費などについてはなにも触れることなく終わってしまった。離婚はできたが,複雑な法律関係は残ったということである。このことに就いてどう対応するか打ち合わせをしたのである。最後の原被告尋問の日に被告側は子供を法廷に連れてきていた。子供を捨てた父親を良く見ておくようにと母親が連れてきたようだった。長女が尋問の間,原告をにらみつけるような表情をしていたことが,どんなにか原告を悲しませたことであろう。被告代理人から「あなたは子供を捨てたではないか」との尋問があったが,その日の朝も子供の元気な様子をみたいために保育園に行って遠くから確認してきたのであって,ひとときも忘れたことはないとの証言を法廷にきていた子供はどう聞いていただろうか。今日の打ち合わせの午前中には小学校の入学式であったので,遠くから登校する様子を見に行ってきたようであった。子供と目が一瞬あったが,反応は見えなかったとのことであった。母親の強い意思で父親とのつながりは完全に断たれている。本人はいつか話せる機会がきたら,今回の離婚のことを子供たちにわびたいとしんみりと話していた。

3番目のケースは,互いに離婚はやむを得ないと考えているが,それぞれがどうしても子供の親権者になりたいと主張している。相譲ることのできない絶対条件となっている。しかも,夫婦が同居して子供たちとの共同生活をしながらの裁判である。そして,もはや審理は終結しようとしていて,事実上判決を待つばかりとなっていたのである。そんな状況のなか,この事件は判決となってどちらかが控訴してされに争うということになれば,夫婦の離婚は互いの納得ずくでも子供たちが不安定な立場におかれて,決して良い影響を及ぼさないことになる。裁判官は,離婚は円滑に実現できてもその養育環境の変化を最小限に抑えるために母親を親権者と指定すれば,父親との今までの子供たちとの絆が完全に切れてしまうことは不幸なことにつながることになるので,最後になんとか話し合いの糸口は見つからないものかと本人と直接話してみるという試みがなされたのである。調査官の提言もあったようである。子供の親権者になって自ら育てたいと強い意思を持ちながら,そのことを諦めて,今後のことを話し合ってみたらとの提言は,当方の本人にとっては,かなり厳しくつらいものであった。涙しながら裁判官の話を聞いていた。子供の幸せの為にどうするのがいいのか,苦しい選択をもう一度よく考えてみるということで,今日は事務所から帰っていった。

父親がいずれも育てたいと願いながらの離婚訴訟であるが,三者三様の対応である。

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