弁護士i依頼者密告制度?

2006年10月19日

今日の夕刊に大きな見出しで資金洗浄など疑わしい取引を弁護士が届け出義務を負うことを内容とする犯罪収益流通防止法案が検討され、これに日弁連が反対していることが報道されている。今日の報道はあらかじめ予想されていたものである。日弁連と法務省、外務省、警察庁はこの制度のあり方をめぐってそれぞれホームページ上で意見を表明してきている。政府側の弁護士に義務を課すことの論拠が国際的にみてもおかしいことが最近の日弁連の外国調査によって明かとなってそのことも論戦が交わされていた。このことに危機感を抱いた警察庁が世論を味方につけようと大きく記事になるよう記者会見をし、その記事の解禁日を今日としていた故の報道である。テロ防止の観点から、弁護士に取り扱い事件に関して報告をさせようとするものであって、「依頼者密告制度」と呼ぶことが適切に法の実態を表現していると言え、我々はそう読んでいる。rnrn2004年、私が日弁連の理事を担当していた時に、この法案が上程されようとした。当時は言葉だけでは内容をただちには理解しがたい「ゲートキーパー法」と呼んでいた。守秘義務の範囲は報告義務はないこと、当時の法案が予定されていた報告先は金融庁であり、テロ防止のためという世論の背景があり、日弁連を通しての通報であれば容認しようということに理事会では決まった。私は、これは弁護士業務にとって重大な影響を及ぼすものであり、簡単にこれを認めることは疑義がある旨の発言をした。アメリカの弁護士会は反対していたし、立法されたカナダでは憲法違反であるとして施行が留保されていたし、ヨーロッパの多くの国でも弁護士の反対で立法化が進んでいないという現状があったからだ。その後、政府は報告先を金融庁でなく警察庁に報告するという制度に切り替えたため、日弁連はそれでは独立した弁護活動はできないと全面反対に意見が変わったのである。いったん、認める方針をだし、その後にこの危険な法案に反対するいい口実ができたというものだ。刑事弁護において闘わなければならない相手に報告義務を課すことは、依頼者が安心して何でも相談できるという信頼を破壊することになり、充分な弁護活動ができなくおそれが常にあるからである。rnrn外国の立法状況、制度の内容と日本で予定されている内容とは大きく異なっている。報告義務の対象となる事件は日常的に取り扱っている不動産取引なども含まれていて、テロなどとは全く関係のない普通の弁護士にとっても無縁ではない。ホームページ上の議論ではその必要性を認めない日弁連が勝っている。政府はこうした状況をうまくマスコミをつかい、あたかも日弁連が無理なあるいは国際テロを助けるような主張しているかのように世論操作をして立法化を図ろうとしているのである。一見公平と思える単なるニュース記事にもこうした思惑によって提供されているのである。ご用心、ご用心。

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