判決言い渡し後の接見要求

2008年4月24日

先週,国選で担当していた恐喝事件について判決があった。実刑判決であった。勤務先の同僚2人から多額の金などを悪質で執拗に恐喝したというものであった。彼は,事件後,捜査の手が伸びないよう会社を辞め,インターネットカフェなどで暮らしていたところ,ある女性と知り合った。そのことが契機となって,人生をやり直そうと決意し,自ら警察に出頭したのであった。犯行そのものには全く同情すべき事情はないが,その後の行動にはその女性の励ましもあって,一から出直そうとする強い決意をみることができた。

国選弁護人に選任されて何度か接見をしてきたが,犯行の態様からみて,被害弁償がなければ,実刑は免れない事案であろうと思われ,その方法を相談していた。結局,しばらく連絡をとっていない県外に住む両親にお願いしてみるしかなかった。両親が経済的に苦しい状況にあることは、被告人自身がよく知っていて、なかなか両親に相談することはできなかった。また,いろいろと励ましてくれるその女性にお願いするなどもってのことであった。結局,両親が年金を担保に,被害金額の一部ではあるが捻出してきた。既に「後期高齢者」であり,病院に通っている身である。本当に苦しい思いで捻出したお金であった。その預かった金額を2人の被害者に弁護人として配分した。そのことを確認してからの判決であった。被害弁償が全くなされなければ,執行猶予はつくことはないが,これが少しでもできれば執行猶予がつく可能性はでてくるだろうと本人やその女性,両親に伝えた。しかし,検察官の求刑意見は,あえて実刑にするべきであると強調し,判決にも執行猶予はつかなかった。

そして,判決後,その女性を通じて私に接見の要望が伝えられた。基本的には,業務の終了報告を既に終えていて,弁護人の役割は終わっていたが,被告人の不安な気持ちや,実刑判決のショックなどがあるのかもしれないと思い,今朝一番に,接見を済ませてきた。接見室に現れるなり,被告人は「先生,本当にお世話になりました。ありがとうございました」と頭を下げるのである。被告人は2年間程度の実刑は当初から覚悟はしていたとのことで,今回の未決勾留日数の算入によって,実質的には1年程度の刑に終わったことを,感謝しているのであった。裁判官にもこの判決によって励ましをもらったと感じることができたようである。わざわざ,このお礼が言いたくて,接見の要望なのであった。忙しい時にこんなことで時間をつぶさせてくれるなといいたい気持ちもあるが,こうして判決後きちんと気持ちを伝えて頂くことは嬉しいことである。ほぼ1年後,彼は自由の身になって社会にでてくる。年金を担保にして借りてくれた両親の気持ちにも感謝をしていた。昨日,死刑判決を受けた少年は,本当に孤独なかで,自分自身さえも理解できないで暗闇に包まれたまま,過去を顧みる心境に至らず,生きる道を断たれた。今回の被告人と比べるべくもない犯罪であるが,この差異は,刑罰の持つ意味を考えさせられる。

この被告人は,控訴をしないで刑に服すると言っている。しかし,彼を受け入れるべき刑務所は満杯で,そちらの施設には当分移れそうにないとのことである。しばらくは岡山刑務所において,今の状態のままで刑罰を受けることになるとのことである。刑務所もいまや順番待ちなのである。

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